介護保険「制度改正」の評価を担う市民の眼

2005年10月25日

(阿部 崇)

■目次

1. 「5年後の制度見直し」
2.制度改正の骨格を知る必要性
3.制度改正を俯瞰する手段

■introduction

2000年4月にスタートした介護保険制度は、当初より「制度施行後5年を目途として制度の見直しを行う」ことが介護保険法(付則)に明記されていた。良く言えば、急速に進む高齢化に柔軟に対応していくため、悪く言えば、2000年までに決められなかったものを予め先送りにしておいたと言えるだろう。
まず、制度改正の下地作りとして、2003年6月に「2015年の高齢者介護」と題する報告書が、あるべき高齢者介護の将来像として示された。当時、これから行う制度見直し(改正)の検討において、何をテーマとしていくかが提示されたのである。その報告書には、制度改正のキーワードである「介護予防」「地域包括ケア」「サービスの質の向上」などの単語が散りばめられている。
この「2015年の高齢者介護」の取りまとめとほぼ同時期にあたる2003年5月より、制度見直し(改正)の検討が社会保障審議会介護保険部会で始まった。もっとも、高齢者介護のあるべき姿の実現のみならず、年々膨らむ介護保険給付費の抑制も避けることのできない問題として、両方を同時に実現することが、制度改正最大のミッションとなった。
約2年間の検討を経て、2005年6月に介護保険改正法が成立した。制度改正は「予防サービスの保険給付化」から「サービス事業所の情報開示」まで、その内容は多岐に渡るが、特徴的なのは、現場の努力と工夫があれば現在の仕組みのままで十分対応・実現できるものが多いことである。とすれば、やはり制度改正の主たる目的は、介護保険給付費の抑制に向けたルール変更だったのではないかと考えざるを得ない。

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