緩やかに変わるインドの経済成長メカニズム

2005年10月21日

(伊藤 さゆり) 欧州経済

  • 人口の増大に加え、経済パフォーマンスの改善で相対的に高い一人当たりGDPの成長と為替相場の増価が見込まれるようになったことで、インドの経済大国化への期待が高まっている。
  • 確かに、経済自由化の進展にともない財・サービス輸出が拡大、資本流入も増大し、経済パフォーマンスは改善したが、製造業の脆弱性からインドには「国際収支の天井」が存在しており、最近では、経常収支の赤字を安定性を欠く資金でファイナンスする国際収支構造に変わりつつある点に注意が必要である。
  • 「国際収支の天井」の制約を緩和し、人口増大に見合う雇用機会を創出するには、内外の投資を促進するよう構造改革を一層推進し、製造業を強化する必要がある。方向として改革は前進しようが、社会構造面から開発独裁型の成長最優先の政策は採り辛いため、変化のスピードは緩やかなものとなろう。成長率で中国を追い抜き、為替相場が持続的な増価に転じるまでには、なお時間を要するものと思われる。

経済研究部   常務理事

伊藤 さゆり(いとう さゆり)

研究領域:経済

研究・専門分野
欧州の政策、国際経済・金融

経歴

・ 1987年 日本興業銀行入行
・ 2001年 ニッセイ基礎研究所入社
・ 2023年7月から現職

・ 2011~2012年度 二松学舎大学非常勤講師
・ 2011~2013年度 獨協大学非常勤講師
・ 2015年度~ 早稲田大学商学学術院非常勤講師
・ 2017年度~ 日本EU学会理事
・ 2017年度~ 日本経済団体連合会21世紀政策研究所研究委員
・ 2020~2022年度 日本国際フォーラム「米中覇権競争とインド太平洋地経学」、
           「欧州政策パネル」メンバー
・ 2022年度~ Discuss Japan編集委員
・ 2023年11月~ ジェトロ情報媒体に対する外部評価委員会委員
・ 2023年11月~ 経済産業省 産業構造審議会 経済産業政策新機軸部会 委員

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