成功か失敗か評価が分かれるチリの年金改革

2005年07月01日

米国のブッシュ大統領が導入を提唱している、個人勘定のモデルはチリの年金である。1980年に、米国で経済学博士号を得た市場重視派の主導の下、チリではそれまでの賦課方式の年金に代えて、労働者自ら給与の10%を拠出し、その運用残高を老後に受け取る個人勘定を導入した。それから25年を経た現在、労働者の9割が1度は制度に加入した経験を持っている。また、運用利回りの平均は10%を超え、個人勘定の導入は貯蓄率の向上や資本市場の発達、財政支出の抑制など経済改革にも寄与したという。
一方で、失業者や低所得者など未納・未加入の割合が全労働者の4割に達している。わずかな所得から拠出した年金よりも、政府の最低保証年金の方が充実しているので、加入・拠出する意欲を失っている。また、拠出や引き出しの際の口座管理料などが高いので、手数料が積立資産を2割以上減らす結果になっている。
複雑で、破綻寸前と言われたかつての制度に比べると、現在の制度はまだ良いと言えるのかもしれない。チリの経験からは、完璧な年金制度改革を遂行することや、たとえ25年経過しても、改革の評価を定めることが、いかに難しいかが痛感される。

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