年金改革の政治学

2003年07月01日

塩川財務大臣の突然の発言により、社会保障審議会での「年金改革」に関する一連の議論はどうなってしまったのだろうかと、多くの人々は思ったに違いない。「現役時代の収入を保証する現在の(年金水準の)考え方では高過ぎるので、これからは老後で夫婦最低限の生活ができる生活保護世帯の給付を上回る程度で良いのではないか」と述べたという。
政府部内には、年金部会での議論を承知した上で、牽制球を投げたい人がいるということであろう。しかし、それなら多くの経済学者が「民営化論」を大合唱していたときに、どうして強く意見を主張しなかったのだろう。
年金水準の議論は基本中の基本である。わが国では、どの程度の所得代替率を公的年金の目標とするのか、といった国家の基本方針についてさえ合意がないとは恐れ入る。このような発言が益々、若者の年金不信を増幅させないかと懸念される。
どこの国の政治家も国民に負担を強いて、給付を削減するよう な不人気と責任を負いたくない。しかし、このような意見は外野でなく、公開討論の場で戦わすことが筋ではないだろうか。

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