経済的視点からみた年金制度改革の進路 -求められる混合型年金制度への移行-

2001年06月25日

(岡田 章昌)

1.
本稿の目的は、経済的視点から年金制度が直面している問題について分析を行い、今後求められる年金制度改革の進路を明らかにすることである。
2.
人口構成の高齢化の進展により従来の確定給付型賦課方式の枠組みにおける制度改正は限界に達しており、この枠組みを超える形で、(1)確定給付型賦課方式の年金を縮小しつつ、(2)個人勘定の確定拠出型積立方式の年金を導入する混合型の年金制度への移行が求められる。
3.
年金制度改革に関する議論の高まりにもかかわらず改革が進展しないのは、確定給付型賦課方式の年金制度の維持と確定拠出型積立方式への抜本的な改革とを対立させる形で改革論議が袋小路に陥っているためである。これらを対立させるのではなく補完的に活用していくことが、年金制度改革を進めていく上で重要である。
4.
年金制度設計において、財政方式と給付額決定方式の組み合わせからより幅広い年金改革のオプションが考えられる。世界の年金制度改革に目を向けると、従来の確定給付型賦課方式の枠組みを超えた多様な年金改革のオプションが示され、現実に改革が推進されている。
5.
個人の期待形成が経済行動に与える影響を考慮に入れた理論的分析から、人口構成の高齢化に伴い、確定給付型賦課方式による年金制度が年金財政の悪化をもたらすばかりでなく、そのような年金財政の悪化を見越した期待が消費行動に歪みを発生させ、現在の消費に悪影響を引き起こすことが明らかとなる。
6.
人口構成の高齢化を考慮に入れた世代重複型一般均衡モデルによるシミュレーション分析から、現行の確定給付型賦課方式で公的年金制度を運営していくことは、少子高齢化の本格的な進展とともに長期的な経済低迷をもたらす可能性が示される。一方、積立年金化は長期的な経済成長を高める上で望ましい年金政策といえるが、制度移行期の高齢世代の経済厚生を悪化させることになる。

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