ポスト巨大都市時代に向かう東京 -多元都市システム構築への試論 (その3)都市づくり理念の見直しと多元都市システム構築への試論

1995年08月01日

(長田 守)

(川村 雅彦)

(松村 徹)

関連カテゴリ

本レポートは、都市開発部が93年度および94年度に実施したテーマ研究の成果に基づき取りまとめたものである。今月号は連載の3回目最終回である。(なお、本文中の項目立ては前月号から続いている)

<要旨>

  1. 都市活動の脱地域化の進展は、都市や地域間に新たな連携関係を生み出し、従来、東京一極集中構造によって一元的に規定されていたわが国の地域構造を多元的な構造に変化させる兆しが出てきた。東京一極集中を促進した時代背景の中で定着してきた今までの都市づくり理念は、東京一極集中構造が地域構造の多元化によって揺らぎ始めている今日において見直しが必要である。
  2. これまでの「国土の均衡ある発展」はわが国が中進国時代での理念であり、その役目は終ったと考えられる。「定住人口を基本とし、その人口増加を前提」とした開発計画は現代都市の実態に合わない。都市・地域間にまたがる政策課題に現状の「広域行政制度」は対応しきれない。国際的な都市間の機能的連携や競合の進展が多面的な「国際化」の必要性を高めている。また、「地球環境の保全」という新たな観点から都市活動の脱地域化を見ると、エコロジカルな環境連鎖構造が従来にも増して広域化し、個々の都市の都市活動が国際的にも大きなインパクトを持つことが分かる。これらを踏まえた新たな理念が求められるのである。
  3. これからの東京の街づくりの基本的課題は、先ずわが国の都市システムを従来の一元的な構造から、どのようにスムーズに多元的構造に誘導して行くかということに掛かっている。全国レベルの多元都市システムが具体化されて初めて、東京の内部改造計画がより有効性を持つこととなる。多元都市システム構築の方法に関する試論として、首都機能(政治・行政機能、経済中枢機能、象徴的機能)の分解とそれを支える三都分立体制の構築、これを支える行政システムとして中央集権型を改編し、基礎自治体の機能強化と、地域的連携のみならず機能的連携に基づくフレキシブルな広域行政システムの導入を提案する。

長田 守

川村 雅彦

松村 徹

レポートについてお問い合わせ
(取材・講演依頼)

関連カテゴリ・レポート