保険料については、戦後長く営業職員による集金扱が続いてきた。
これは、ある営業職員が一定地域を受け持ち、その地域内で新契約募集と保険料集金などの諸手続きをすべて一元的に行うというデビット・システム(debit system、地区受持制度)によるもので、顧客にとって、自宅にいながらにして営業職員が訪問し保険料を集金してくれるという利便性があった。
一方、1955年に公共料金の預金口座振替制度が開始され、住宅ローンや生命保険料などについても取扱いが拡大された。また、企業が従業員の給与から保険料を天引きする団体扱も着実に増加した。
1977年には口座振替扱が全体の7.6%、団体扱が22.5%(集金扱は54.3%)、1980年には口座振替扱が12.8%、団体扱が26.3%(集金扱は48.4%)に達した
1が、1987年4月の口座振替保険料率の新設(集金扱料率より1.5%軽減)により、預金口座振替による保険料収納は爆発的に増加した。
しかしながら、口座振替扱や団体扱による保険料収納は第2回目以降の保険料についてであり、初回保険料は依然として営業職員による集金や顧客による送金がほとんどを占めた。
初回保険料について、2005年10月、プルデンシャル生命はデビット機能が付与された金融機関のキャッシュカード(debit card、代金を口座から即時に引落とすカード)、クレジットカードなどによるキャッシュレスを実現した。
さらに、2006年8月、ソニー生命は、責任開始期に関する特約により、申込みと健康状態の告知のみで、初回保険料入金前の責任開始を可能とした
2。
現在では多くの生保会社が預金口座振替による保険料収納に加え、クレジットカードによる保険料収納や、初回保険料入金前の責任開始を可能として、保険料の完全キャッシュレスを実現している。
顧客の利便性を向上させるとともに、生保会社の事務合理化などにも貢献する保険料キャッシュレスのこれまでのあゆみと現状を報告することとしたい。
1 大島寿文「預金口座振替制度をめぐる実務上の諸問題」、『生命保険経営』第50巻第1号、1982年3月。
2 井上亨「保険料のキャッシュレスと約款の責任開始規定」、『生命保険論集』第160号、2007年9月。
2――保険料キャッシュレスのあゆみ