1996 年の保険業法改正で、顧客保護のために標準責任準備金制度が導入され、責任準備金の積立基準を定めて、保険会社に対して標準責任準備金の積立が義務付けられることとなった。
保険契約は長期にわたるものであり、保険会社は、顧客から受け取った保険料を、将来の保険金や給付金を支払うために積み立てる必要がある。
この将来の保険金や給付金を支払うために積み立てる金額が責任準備金であるが、十分な金額を積み立てておかないと、将来の保険金や給付金の支払いに支障が生じる懸念がある。
標準責任準備金度については、大蔵省告示で定められているが、予定死亡率(性別・年齢別に将来の死亡率を予測した数値)は日本アクチュアリー会が作成し、監督当局が検証したものとされている(標準死亡率)。
予定利率(責任準備金を運用する将来の利率を予測した数値)は、毎年10月時点での、10年国債の応募者利回りの過去3年間の平均値と過去10年間の平均値の低い方に安全率係数を乗じて算出することとされ、その時点で適用されている利率と0.5%以上乖離した場合に、0.25%の整数倍の利率に変更する(翌年の4月1日以降の新契約に適用)とされているが、これが標準利率である。
標準利率は、1996年4月時点で2.75%だったものが、1999年4月には2%に、2001年4月には1.5%に、2013年4月には1%に引き下げられ、さらに今回0.25%に引き下げられたものである。
保険期間が1年以下の保険契約、変額保険や予定利率変動型保険、外貨建保険などは標準責任準備金制度の対象外となっている。
なお、標準利率算出ルールについては、2014年6月、一時払契約の設定方法の新設(平準払契約は従来どおり、毎年1回、10月に見直しが行われるが、一時払契約は毎年1月、4月、7月、10月の年4回見直し。また、うち一時払終身は10年国債と20年国債の、一時払養老、一時払年金などは10年国債の、それぞれ過去3か月間の平均値と過去1年間の平均値の低い方に安全率係数を乗じて算出するなど。2015年4月以降に締結する保険契約に適用)などの変更
1が行われている。
さらに、2016年6月、0%以下の国債利回りの平均値(指標金利)に対応する安全率係数を設定するなどの変更(即日適用)
2が行われている。
1 「『保険業法第百十六条第二項の規定に基づく長期の保険契約で内閣府令で定めるものについての責任準備金の積立方式及び予定死亡率その他の責任準備金の計算の基礎となるべき係数の水準(平成八年大蔵省告示第四十八号)の一部を改正する件(案)』に対するパブリックコメントの結果等について」(2014年6月20日)、金融庁ホームページ、勝野健太郎「標準利率算出ルールの見直し」『生命保険経営』第82巻第5号、2014年9月、猪ノ口勝徳「民間生保一時払保険の標準利率設定方法の変更について」『共済総研レポート』No.137、2015年2月。
2 「『保険業法第百十六条第二項の規定に基づく長期の保険契約で内閣府令で定めるものについての責任準備金の積立方式及び予定死亡率その他の責任準備金の計算の基礎となるべき係数の水準(平成8年大蔵省告示第48号)等の一部を改正する件(案)』に対するパブリックコメントの結果等について」(2016年6月22日)、金融庁ホームページ。
3――標準利率と保険料計算上の予定利率との関係