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ビットコインの発行(2009年)と取引の拡大
こうしたビットコインの概念に賛同した研究者やプログラマーなどの有志がプロジェクトを結成、プログラミングを行い、2009年、ビットコインが初めて発行された。
第三者による取引記録の承認に対するビットコイン新規発行額は、当初の21万ブロックまでは、1ブロックごとに50ビットコイン、つぎの42万ブロックまでは、半分の25ビットコインが付与される。
このように、第三者による取引記録の承認(採掘)に対するビットコインの新規発行額は、21万ブロックごとに半減するように設定されており、現在の発行残高は1300万コインを超えている。
一方、ビットコインの最小単位は、0.00000001 ビットコインと設定されていることから、692万9999番目のブロックでビットコインの新規発行ができなくなり、その時点の発行残高は約2100万コインとなることから、ビットコインの発行総量は約2100万コインと予想される。
また、第三者による取引記録の承認は、1ブロック当たり約10分を要することから、全体の692万9999ブロックを乗じた約132年後に最後のビットコインが発行されることとなる
3。
ビットコインは当初、商取引に使用されることはなく、研究者やプログラマーなど一部の者が保有するに過ぎなかった(なお、Satoshi Nakamotoは、自分の身元を明かすことなく2010年にプロジェクトを去ったとされている)
4。
2010年5月18日、米国フロリダ州のLaszlo Hanyeczと称するプログラマーがピザ2枚を1万ビットコインで買いたいとのリクエストをビットコインフォーラム(ビットコイントークホームページ)に投稿したところ、同人より5月22日に取引が成立したとの報告があった
5。
このピザ2枚(約25ドル相当)の1万ビットコインでの購入が、ビットコインを使用した最初の商取引とされ、5月22日はBitcoin Pizza Dayと称されている(その後のビットコイン相場の高騰により、2013年12月には、「コンピュータープログラマーが600万ドルで2枚のピザを購入」などと報道されている)
6。
2009年に、トレーディングカード(鑑賞やゲームのためのカード。交換や収集が行われる)の交換所として設立されたMt.Gox(Magic: The Gathering, Online eXchangeの頭文字、マウント・ゴックス)社は、2010年7月17日、ビットコインの取引を開始した(本社は東京の渋谷)。
2011年2月9日には1ビットコインが1ドルとなり、同年6月には30ドルまで上昇したが、Mt.Gox社のハッキング被害を受け、下落した。
2013年3月のキプロス金融危機
7に際し、通貨ユーロへの信頼は低下し、欧州投資家がビットコインを購入したことから、ビットコイン相場は急上昇し、2013年年初に1ビットコイン13ドルだったものが、2013年4月11日には100ドルとなった
8。
2013年10月、中国のネット検索大手の百度(バイドゥ)がビットコインを決済通貨として採用したことから、人民元に対して不満を感じる中国人が、投機目的もあり、ビットコインを買い、市場価格は急上昇し、同年11月末には1ビットコインが一時1242ドルとなった
9。
しかしながら、同年12月5日、中国人民銀行など関連5部門は、財産権と公共の利益の保護と金融の安定性の維持に向け、人民元の法定通貨としての地位を維持するとともに、マネーロンダリングのリスクを防止するために、金融機関に対しビットコインを用いた金融商品や決済サービスの提供、ビットコインの通貨との両替禁止、ビットコイン関連事業への保険提供の禁止などを通知した。
また、ビットコイン関連サービスを提供するウェブサイトについて、当局への登録を義務付け、マネーロンダリング防止に向けた監視対象とするとともに、利用者は個人情報を開示のうえ、実名で登録することが求められた
10。
このような規制導入の背景には、格安な手数料での人民元のビットコインを経由した他国口座への送金によるマネーロンダリングなどがあったとされ、通達によりこうした事態は根絶された
11。
この通達後、人民元建てビットコイン相場は、わずか1日で60%以上も値下がりした。
3 「大石哲之のビットコインの仕組み入門(1) ビットコインの発掘とは実際には何をしているのか?」、「大石哲之のビットコインの仕組み入門(2)ビットコインの発行上限と、採掘量が減っていく仕組み」、日本デジタルマネー協会ホームページ。
4 「よくある質問」、bitcoin.orgホームページ。
5 Laszlo "Pizza for bitcoins?"(2010年5月18日)、bitcointalk.orgホームページ。
6 " How a programmer paid $6M in Bitcoin for two pizzas and other tales from the digital currency mine"(2013年12月22日)、venturebeat.comホームページ。
7 2013年3月16日、EUがキプロスに対して100億ユーロの金融支援を行う条件として、キプロス自身にも資金調達をするように促した。具体的には、キプロスの全預金に対し、10万ユーロ超の部分については9.9%、本来、預金保険の対象となる 10万ユーロ以下の部分についても6.75%を課税し、58億ユーロ捻出を目指したが、キプロス議会は3月19日、同課税法案を否決し、3月28日以降、キプロスでは1日当たりの預金引き出し額を300ユーロに制限したり、定期預金の解約が禁止されるなど、金融業界は大混乱に陥った(小林敏雄「ユーロの憂鬱」『国際通貨研究所ニュースレター』、2013年5月)。
8 小野将司「ビットコインの概要と海外の動向について」『警察学論集』第67巻第6号、2014年6月。
9 「ビットコイン、ギークが育てた無国籍通貨」『日本経済新聞』(2013年12月29日)、「広まるビットコイン、貨幣になる日は来るか 日本でも利用者が増加。仮想通貨の実体と今後は?」『週刊東洋経済』(2014年2月19日)。
10 「人民银行等五部委发布关于防范比特币风险的通知」(中国人民銀行など関連5部門、ビットコインのリスクの防止に向けた通知を発出)、工業情報省(工业和信息化部)ホームページ、「中国人民銀行、ビットコインに警鐘―フランス中銀も」『ウォール・ストリート・ジャーナル』(2013年12月6日)。
11 大石哲之「なぜ中国人はビットコインを買い漁ったのか?ビットコインをつかった送金の具体的な手口」『BLOGOS』(2013年12月6日)。