三尾 幸吉郎()
研究領域:
研究・専門分野
■要旨
1―日本で存在感を高める中国本土からの旅行者
訪日外客数は10年前に比べて全体で約2倍に増えたが、中国本土からは約4倍に増えており、中国本土からの旅行者が日本で存在感を高めている。今年に入っても中国本土からの旅行者は増加しており、上期(1-6月期)だけで218万人と前年同期の2倍を超えている。
2―中国本土からの旅行者の特徴
中国本土からの旅行者は観光・レジャー目的が55.1%、業務目的が29.0%となっており、訪日する目的が何かによりその特徴も異なる。観光・レジャー目的の場合には初めて訪日する人が多い、団体ツアーに参加した人が多い、消費単価が高いという特徴がある。業務目的の場合には、観光・レジャー目的とやや異なるが、消費単価が高いのは同じである。
3―中国側から見た日本への旅行
一方、14年に中国本土から境界を跨いで旅行した人の数(出境者数)は1億人を突破した。香港・マカオを除いたシェアで見ると、韓国が13.0%、タイが12.3%と、日本の5.6%を遥かに上回る。従って、日中関係の改善が進んで中国本土の対日感情が好転すれば、中国本土から日本を訪問する旅行者は飛躍的に増加する可能性が高いと思われる。
4―中国本土からの旅行者数はまだ増えるのか?
中国本土の所得水準が今後も向上することを踏まえると、中国本土からの出境者数は2020年には約2.5億人(年平均増加率14.9%)になると推計できる。日中関係がさらに悪化すれば増えないことも有り得るが(悲観ケース)、今のままでも2倍くらいにはなるだろう(標準ケース)。また、日中関係が改善に向かえば4倍になる可能性もある(楽観ケース)。
5―今後の展望
中国本土からの旅行者数は今後の日中関係や為替レートの変化などで一時的には減少することも有り得るが、長期的に見れば増加トレンドを維持するだろう。そして、地方への分散、爆買い意欲の低下といった変化がゆっくりと進みそうだ。中国本土からの旅行者が日本の"お客様"になることで、その経済発展を初めて肌で実感することになりそうだ。
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