老後の所得保障に不可欠な年金選択割合の向上

2015年06月03日

DC制度では一時金による受給の割合が9割を超え、本来の目的である年金での受給割合が1割にも満たないとの調査結果がある。一時金と年金とで受給時の税制上の取扱いが異なることが一因と推測されるが、人々の心理的な傾向が影響している可能性もある。

人々は、遠い将来の利益よりも、目先の利益を優先する傾向にあることが指摘される。双曲割引や近視眼的行動などと言われる心理的バイアスで、将来の貴重な生活資金である筈の年金原資が、目先の満足度を高める消費のために、一時金という形で受給されている可能性である。

仮に、心理的バイアスを主因として年金選択割合が低水準に留まっているのであれば、DC制度が普及したとしても、老後の所得保障として必ずしも十分に機能するとは限らないことになる。

昨年、公的年金を補完する機能の強化を含め、企業年金制度の在り方が議論され、その一環でDC制度については、様々な普及促進策が実現しつつある。しかし、年金選択割合が低水準に留まる現状を踏まえると、老後の所得保障の充実という点では十分とは言い切れない。年金選択割合の改善に向けた早期の政策対応が望まれる。

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