三尾 幸吉郎()
研究領域:
研究・専門分野
■要旨
1―2年ぶりに下落に転じた住宅価格
中国では住宅価格が2年ぶりに前月の水準を下回った。中国では2008年や2011-12年にも住宅価格は調整したが、いずれも小幅・短期の微調整で済んだ。今回も前回同様に微調整で済むのか、それともバブル崩壊のような事態に陥るのか。本稿では住宅バブルの現状分析を通じて、住宅市場の行方を探ってみたい。
2―"崩壊"する可能性を否定できない高さ
中国の住宅価格を何年分の収入で購入できるかという観点で試算してみると約7.3倍とはじき出される。この倍率は、国際的には4~6倍 が合理的な水準とされており、中国の住宅価格はそれよりも3割程度高い水準にある。また、米国では最高値から約3割の下落で住宅バブルの"崩壊"と表現されたことを勘案すると、現在の中国の住宅価格は"崩壊"する可能性を否定できない高さにあるといえるだろう。
3―"崩壊"を促すカタリスト(触媒)はあるのか?
住宅価格が下落するためには、価格が高いだけでなく需給バランスを崩すようなカタリストが必要である。そのカタリストとして指摘されるのが、中国で現在進行中の生産年齢人口のピークアウトである。一方、中国では都市化が進むので、生産年齢人口のピークアウトだけでは十分なカタリストとはいえないとの見方もある。
4―今後の展望
今回の住宅価格の調整は、(1)需要が減退すること、(2)腐敗汚職撲滅運動の影響、(3)金融緩和が遅れ気味となりそうなことから、最高値から5-10%程度の深押しとなる可能性があり、直近2回のような小幅・短期な微調整では済みそうには無い。しかし、今回の下落を発端にして住宅バブルが"崩壊"すると予想するほど現在の状況は悪くないと思われる。
研究領域:
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