井上 智紀()
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研究・専門分野
1――完全に定着した「人生80年時代」
1│都道府県別の平均余命
先月28日に厚生労働省が公表した「平成22年都道府県別生命表の概況」によれば、平成22年時点のわが国の都道府県別の0歳児平均余命(平均寿命)は、男女とも1位が長野県(男性80.88歳、女性87.18歳)であり、男性では滋賀県(80.58歳)、女性では島根県(87.07歳)が続く1(図表 1)。
男女とも全国平均を1歳以上下回るのは東北の一部の県だけであり、男性でも8府県で80歳を超えるなど、「人生80年時代」は完全に定着したといってもよさそうだ。
2│死亡時の平均年齢
2011年の「人口動態統計」より性・年齢階級別の死亡数をみても、死亡者のうち「80歳以上」が占める割合は男性で45.1%、女性では68.4%となっており、都道府県別にみると、男性では18の県で半数以上を、女性では32の府県で7割以上を、それぞれ「80歳以上」が占めている(図表 2)。
また、女性では23の府県で「90歳以上」の割合が3分の1を超え、「人生90年時代」を迎えつつあるともいえそうだ。
2――長寿化はどこまで進む?
このような平均余命の進展は医療技術の発達に拠るところが大きいが、今後の医療技術の発達により日本人の余命はどこまで伸びていくのだろうか。
長く日本人の三大死因とされてきた悪性新生物、心疾患及び脳血管疾患が克服されたと仮定した場合の平均余命の伸びについてみると、平均では男性で7.67年、女性で6.53年となっている(図表 3)。都道府県別では、男女とも平均余命が短い東北各県を中心に大きく伸びており、これらの疾患が克服されれば、男性でも平均寿命は80歳代後半に達し、男女とも「人生90年代」を迎えることとなろう。
これらの疾患の克服にはまだかなりの時間を要すると思われるが、一方で、これらの疾患が克服されたとしても、その他の疾患を抱えていては「人生90年時代」を謳歌することはできまい。長寿化の進展とともに、「いかに健康を維持するか」についても、今まで以上に考えていく必要があるだろう。
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