コラム

投資の法則は変化したか?(1)- 月次効果アノマリー (1月効果等) を再検証する

2013年01月23日

(伊藤 拓之)

株式市場では、「1月の株高」、「節分天井彼岸底」、「新年度相場で4月の株高」「夏枯れ相場」など季節にまつわる相場の格言があり、意識している投資家も多くいるだろう。これらはアノマリー(Anomaly)と呼ばれる合理的には説明できないが、よく当たるとされている経験則である。

ファイナンス理論の効率的市場仮説(Efficient Market Hypothesis)によれば、市場は効率的であるということを前提に、反映される情報の範囲に諸説あるが、すべての情報が生成されると即座にかつ完全に価格形成に反映されるとしている。その結果誰も継続して他人よりも優れた投資成果を上げ続けることができない。しかし市場の効率性に関する実証研究で効率的市場仮説に反するアノマリーがさまざまに報告されている。

今回は実際の株式市場(日本:TOPIX、米国:S&P500)、為替市場(ドル円)、債券市場(10年金利)の30年間の月次収益率データ(債券は10年金利変化幅)を用いて、月次の季節性アノマリーはいまだ有効か検証してみた。

株式市場についてみると、日米とも全期間では1月の収益率が高い「1月効果」は確認されたが、直近10年は負の収益率であり、その代わり近年では前月12月の収益率が高かった。また日米ともに3月、4月の収益率が安定的に高く「新年度相場」は有効で、逆に7月~9月の夏場に収益率が悪い「夏枯れ相場」が確認された。



為替市場をみると、特定の月で円安傾向は見られなかったが、7月~10月の夏場に円高傾向が観測された。債券市場では安定的に6月に金利上昇が観測され、9月以降の年後半では金利低下が観測された。



さらに米国株式市場では「株は5月に売って、遊びにいけ(Sell in May and Go away)」と言う格言(wisdom)がある。では仮に半年間株式を保有するとして、各月末で売買する場合、どの月に売ると大きな儲けになるか検証してみた。日米株式市場の30年間の各月の6ヶ月収益率を用いて検証した。

日米ともに「10月末に買い4月末に売り」の場合が高く、次に「11月末買い5月末売り」が高くなった。この相場格言の「Sell in May and Go away」は実際過去30年において他の月で投資するよりも高いリターンを獲得できていたことがわかる。今回の日本市場の株式上昇も野田前首相が衆議院解散を提案した11月中旬より始まっており、今年も「11月買い5月売り」で高いリターンを上げられるか?引き続き眼が離せない。


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