櫨(はじ) 浩一(はじ こういち)
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研究・専門分野
1.米国の大学は卒業が難しい?
米国の大学は入りやすいが卒業は困難で、日本の大学は入学するのは難しいが卒業は簡単だから、日本の大学生は勉強しないのだ、と長年思い込んでいた。しかし大きな間違いだったようだ。
米国の有名大学と言えば、激しい競争で多くの学生が次々と脱落していき、卒業までたどり着くのは大変だというイメージを持っていた。しかし、ハーバード大学のホームページは、入学者のうちで97%が卒業するとうたっている。米国の大学ランキングをみると、上位に並ぶ有名大学では、入学してから6年間で卒業する人の割合は、プリンストンやイエールでも96%もある。米国の有名大学で卒業までたどり着く入学者の割合が昔から高かったのかどうかは知らないし、これに対応する日本の大学の数字も見たことがないが、報道されている退学者の割合などを見ると、もっと低いだろう。
2.競争させるだけではうまくいかない
日本経済を活性化させる方策を問うと、もっと競争原理を取り入れるべきだという答えが返ってくることが多い。しかし、単純に規制を取り払って自由競争にしたり、公的部門が行っていたことを民間企業が行うようにしたりするだけで、日本経済の効率が改善するとは限らない。話を大学にもどせば、単純に成績下位の学生を卒業させなければ、なんとか卒業しようとして日本の大学生が勉学に励むようになる、という簡単な問題ではないだろう。
かつての日本は、組織の和を重視するあまりに、内部の競争を避けようとし過ぎて社会の活力を低下させてしまっていた。しかし、最近は逆に競争を強調し過ぎて、チームワークの重要性を軽視するきらいがあるように思える。個人間の競争を強調し過ぎると、互いに競って能力を高めるよりは、相手を出し抜いたり足を引っ張ったりという後ろ向きの争いが生まれがちだ。
3.見直されるチームワーク
ハーバード・ビジネス・レビューの9月号が「最強チームをつくる」というタイトルで、チームワークの重要性を取り上げているのを見て驚いた。個人主義の欧米では、集団の成果は必ず個人に分解できると考えているとばかり思っていたからだ。
米国の大学は卒業するのが簡単なのだとはとても思えない。ハーバードやMITを卒業するためには良い友達が不可欠で、友人達と協力しあっていかなくては卒業まで生き延びていけないと言う。
互いに競い合うという個人間の競争は必要だが、同時に互いに助け合うというチームワークがなければ、集団自体が生き残れない。時代によって、競争が強調されたり、チームワークが強調されたりするが、真理は常にその中間にあるようだ。
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