中村 昭()
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研究・専門分野
かつて北海道に勤務しておりました頃、土地柄もあり、林業を営まれているお客様とお会いすることがありました。その当時は、再生紙使用割合の不当表示(○○%再生紙と謳いながら、実際は再生紙使用割合が低い製品が販売されていたこと)が社会問題となっており、リサイクル取組を裏切る背信行為であると糾弾されていました。
しかし、その分野の専門家であるお客様のお話では、『再生紙こそ、著しい環境破壊を引き起こすものである。インクでいっぱい着色されている回収古紙を、脱色して再生紙に仕上げ直すまでに、どれほど大量の化学薬品を使った処理工程が必要か。そして、処理後の廃液も多大な環境負荷を生じさせている。』とのことでした。さらに、『有限な資源(金属・石油化合物等)については、リサイクルは重要であろう。しかし、紙は木から作られる。そして、木は植えれば生えてくる。木自体が、再生可能資源なのだ。だから、紙を再生する必要はなく、木を植えるべきなのだ。』と、教えて頂きました。単純に、「再生紙利用=リサイクル=良いこと」という図式に囚われていた私は、自らの不明を恥じました。
『木は植えれば生えてくる』との言葉のインパクトは大きく、それ以来、木材という再生可能資源に興味を抱くようになりました。しかしながら、調べてみて分かりました日本の森林の姿は、私の想像とは大きく異なったものでした。
さて、最近はMy箸ブームで、外食時に自分のお箸を携帯使用し、お店の割り箸を使わないことが流行しています。木材使用を控えることにより、環境問題の改善を図ろうとの意図によるものです。
確かに、このブームには効果があります。それは、割り箸の98%が輸入されており、さらに、その99%が中国製であるという現状があるからです。中国の森林率は21.9%に過ぎず、国土全体に対する割合でみれば、非常に森林資源が乏しい国であるといえます。ですから、森林国である日本が、資源の乏しい中国の森林資源を伐採使用している現状は、このまま放置されていて良いものではありません。My箸ブームは、お隣の中国の環境問題の改善に効果をあげていくことでしょう。
しかしながら、そもそも国産の割り箸は2%しか使用されていないために、My箸ブームは、日本の森林問題の改善には、何の貢献もしていないのです。
『木は植えれば生えてくる』のですから、豊かな森林国日本の課題は、いかに森林資源を利用するのかにあると思います。森林資源を利用しなければ、森林自体のメンテナンス費用もまかなえません。
森を愛することとは、ズバリと言えば、森にお金を使うこと。森にお金を使うこととは、寄付活動や植樹・育樹活動だけではなく、木材製品を積極的に購入利用することもあてはまるでしょう。
そこで、My箸ブームを一歩進めて、日本箸(国産材による割り箸)を積極的に購入利用する試みはいかがでしょうか。ただでさえコスト競争の激しい飲食店に、相対的に値段のはる日本箸を常備して頂くのは忍びないので、自分でMy日本箸を購入して、外食のたびに持参使用するわけです。使い捨てですから、My箸のネックである衛生問題・洗剤問題もバッチリ解消です。
ネット通販で検索しますと、国産材の割り箸も一膳あたり5円程度で購入できるようです。日に一度外食をするとして、365日使用しても、年間2,000円程度のコストです。それでも、1億人が使えば2,000億円!2010年の日本の林業総生産額1,567億円を上回ります。
私も、早速、ゆかりのある北海道産木材使用のカッコイイ利休箸(上下が細くなっている千利休好みの小粋な箸)、一膳あたり8.25円を大量購入いたしましたので、商品到着次第、率先して日本箸運動を展開いたします。
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