図表でみる中国経済-地方経済の動きから見えてくる巨大中国の全体像

2012年07月02日

(三尾 幸吉郎)

  1. 全国に先駆けて経済発展を遂げた東部地区では、ここ数年成長率が鈍化する行政区が多く、2012年1-3月期も北京市や上海市が前年同期比7.0%と、3月の全国人民代表大会で決定された2012年の成長率目標(7.5%)を下回るところが続出、中国が5月中旬に預金準備率の引き下げや省エネ家電等の普及促進策を決定した背景ともなっている。
  2. 東部地区に隣接する中部地区は、「中部勃興」、「東北振興」といった政府支援に加え、平均賃金が低いことを武器に、東部地区からの工場移転を柱とした成長戦略で高成長を維持しており、今年1-3月期も8つの行政区すべてで全国の8.1%を上回った。但し、中部地区でも賃金は上昇しており、後発新興国の追い上げを凌いで高成長を維持できるか否かが注目される。
  3. 面積で約7割を占める西部地区は、「西部開発」といわれる手厚い政府支援に加えて、天然資源や観光資源が豊富なことから積極的な投資が行われており、今年1-3月期も全ての行政区で10%台の高成長を続けている。但し、GRPに占める投資の割合が8割を超える行政区が増え、地方債務も肥大化したことから、これ以上の投資拡大は徐々に難しくなりつつある。
  4. これまで好循環してきた「東部地区が先行発展し、中部地区への工場移転や西部地区への財政移転で、全国に恩恵が及ぶ地区を跨ぐ成長戦略」は悪循環に陥るリスクが浮上しており、財政出動や金融緩和による景気下支えの必要性が高まっている。但し、高成長を長期的に維持するためには、地区別の成長戦略を成功に導く方が重要と思われる。



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