川村 雅彦()
研究領域:
研究・専門分野
関連カテゴリ
■見出し
1――試行錯誤が始まった「統合報告書」
2――なぜ「統合報告」なのか
3――投資家と企業に求められる開示情報の全体的な見直し
4――保険業も決して無縁ではない「統合報告」
■introduction
企業の情報開示について、「統合報告書(Integrated Report)」の模索が世界的に始まっている。統合報告書とは、企業の売上や利益などの財務情報と、ESG(環境・社会・統治)問題への対応や中長期の経営戦略などの非財務情報を関連付けて報告しようとするものである。
統合報告書の国際フレームワークを開発している民間組織IIRC(国際統合報告委員会)1が、2011年9月にディスカッション・ペーパー(公開草案)を公表した。これは統合報告書の定義や基本原則、構成要素について提案し、パブリックコメントを求めたものである(図表参照)。
IIRCは最終的には統合報告書の企業報告における主流化を目指している。当面は、ディスカッション・ペーパーと統合報告フレームワーク(案)に基づく実証実験的なパイロット・プログラム2が2011年10月から開始され、2013年末に総括が行われる予定である。つまり、実際どのような報告書を作ればよいのか、実務的にも試行錯誤をしながら統合報告書の枠組みの議論がこれから本格化することになる。
ただし、GRI3によれば、主に財務報告を行うアニュアル・レポートにCSR情報を掲載した統合報告書が世界的に増えており、欧州を中心に既に350社が2011年版報告書を発行している。日本企業でも既に数社が発行しているが、武田薬品工業と日東電工は数年前から発行しており、いずれもグローバル化に伴う事業環境や社会的課題の認識に変化が起きていることが背景にあるという。
研究領域:
研究・専門分野