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「一人暮らし」だけではない“孤立死”―想定外という思い込み
2012年04月09日
(土堤内 昭雄)
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日本では「高齢化」と「世帯の縮小」が進んでいる。東京都の今年1月1日現在の平均世帯人員は1.99人とついに2人を下回った。また、平成20年「住宅・土地統計調査」(総務省)によると、高齢者がいる世帯は1,820万世帯と全体の36.7%を占め、そのうち単身世帯は414万世帯(22.7%)、夫婦のみ世帯は511万世帯(28.1%)、両者を合わせると高齢世帯の過半数を超えている。そのため特に「一人暮らし」や「夫婦のみ」の高齢世帯の見守りの必要性が高くなっている。
しかし、最近では二人暮しの「孤立死」が相次いでいる。東京都立川市では、45歳の母親が病死、障害のある4歳の子どもが衰弱死した。また、同市で95歳の母親を介護する63歳の娘が病死して、母親も衰弱死。埼玉県川口市では92歳の母親と64歳の息子が病死。神戸市でも同様に82歳の母親と53歳の長男が病死。いずれのケースも要介護の高齢者や子どもを介護していた人が先に病死し、残された人が衰弱死し、数週間から数ヶ月して発見された「孤立死」事件だ。
これまで「孤立死」といえば主に「一人暮らし」の人を想定していなかっただろうか。一人で社会から孤立して暮らしているから「孤立死」に至るのだ、と多くの人が思い込んでいた。実際、立川市の公営住宅に住む親子の場合、東京都住宅供給公社に「住人と連絡が取れない」という地元自治会からの情報提供があったものの、60代の娘が介護者として一緒に住んでいたことから「緊急性はない」と判断され、住戸へ立ち入った安否確認は行われなかった。まさに想定外という思い込みの結果だ。
高齢化は長寿化である。長生きできるようになり、高齢者が高齢者を看る老々介護が増えている。平成22年国民生活基礎調査で要介護者の年齢をみると、70歳代が25.9%、80歳代が45.4%、90歳以上が18.8%と、3人にふたりは80歳以上になっている。そして80歳代の要介護者を80歳以上の人が介護する老々介護は19.3%にも上る。また、要介護度3、4、5の人の場合、介護者の3~5割はその介護時間が「ほとんど終日」と回答しており、超高齢社会では介護者のケア対策も重要なのだ。
悲惨な「孤立死」は「一人暮らし」に限らない。社会的孤立は個人だけでなく世帯単位でも起こるからだ。入間市では乳酸菌飲料の配達員が訪問先の異常を通報し、介護者の75歳の母親は亡くなったが要介護者の45歳男性の「孤立死」を未然に防いだ。「二人暮しの孤立死は想定外」という思い込みを見直し、たとえ同居家族がいても地域社会の見守りが必要なのだ。自治会や民生委員に加えて電気・ガス事業者や新聞配達といった地域社会全体の多層的なセーフティネットの構築が求められている。
(参考) 土堤内昭雄『
高齢者の社会的孤立について~地域に居場所をつくる
』ジェロントロジージャーナル(2010年4月)
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