高齢化の影で進む社会の変化

2011年09月26日

(井上 智紀)

6月末に公表された平成22年国勢調査の抽出速報集計によれば、わが国の高齢化率は23.2%と、ほぼ4人に1人が高齢者という時代を迎えており、今後も2020年には29.2%、2030年には31.8%と、急速な伸展が見込まれている。このような高齢化の伸展は、地域により差はあるものの、企業や行政においては、急拡大する高齢者市場の開拓や急増する高齢者への対応が喫緊の課題となって久しい。
一方で、女性人口100人あたりの男性人口を示す人口性比についてみると、2010年時点では首都圏の一部と愛知県を除くすべての都道府県で女性のほうが多く、高齢化率と連動しているわけではないものの、概ね高齢化率の高い地域ほど、女性100人あたりの男性人口が少なくなっている(図表―1)。また、今後の推移をみると、2010年時点で「85~90未満」である南九州および四国、東北の一部を除いて、各都道府県とも人口性比は低下する傾向にあることがわかる。このことは、多くの都道府県において今後、女性、特に高齢女性の割合がさらに高まっていくことを示している。足元で伸展している高齢化とは、単に「高齢者」が増えていくということだけではなく、「女性」の存在感が高まっていくことでもあるといえよう。
このような人口性比の地域格差および経年でみた推移の背景には、社会移動や高齢化の伸展、男女間の平均余命の差異など複合的な要因が考えられるが、企業や行政にとっては、そうした背景よりもむしろ、このような環境変化を踏まえた上で、急増する「高齢者」だけではなく、「女性」の需要を如何に汲み取り、対応していくかといった視点をもつことが重要であるといえるのではないだろうか。

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