東日本大震災からみたBCP(事業継続計画)

2011年09月26日

(川村 雅彦)

3月11日の東日本大震災から半年が過ぎた。地震・津波・原発事故と巨大な複合災害に直面し、東北から関東にかけて事業所がある企業の多くは、これまでに経験したことのない甚大な被害を受けた。現在も復旧・復興に向けて精力的な取組が続いている。この間のキーワードは「想定外」であろう。そして、本稿のテーマであるBCP(Business Continuity Plan事業継続計画)もその一つである。
阪神・淡路大震災(1995年)や中越沖地震(2007年)などの経験から、企業の地震対策や危機管理の重要性は指摘されてきており、数年前の新型インフルエンザの世界的流行を契機として、BCPを策定する日本企業は大企業を中心に着実に増えてきた。しかし、今回の東日本大震災を経験した関東の企業からは「BCPは思ったほど機能しなかった」という声も少なくない。
何故であろうか。いくつかの理由が考えられる。一つには、今回の大震災の性格がある。つまり、日本企業がこれまで経験したことのない広域かつ巨大な複合連鎖災害であり、しかも「想定外の連鎖」だったからである。関東の企業は直下型地震を想定し、遠い震源地の影響は想定外であった。さらにその二次・三次災害も想定されず(あるいは想定を超えた)、それに対応するBCPそのものが存在しなかったのである。結果として、「計画停電」やサプライチェーンの途絶や寸断に対する検討はなされていなかった。
さらに、大震災前に策定された既存BCPの多くは、「災害の原因」の規模を発動基準としているが、大震災を経験した現在にあっては、中核業務・事業の遂行機能に着目して「災害の影響」の度合いに応じたBCPを策定すべきである。そうでなければ、想定される個別の災害ごとにBCPを策定するという無駄に陥るだけでなく、かえって「想定外」を作ってしまうからである。
そこで本稿では、BCPに着目し、その策定状況や今回の大震災からの教訓を踏まえた構造的な課題を明らかにして、これからのリスク・シナリオの考え方を提示する。

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