2000年以降、東京都心部には、高度な建築・設備スペックを持つ大型ビルが増加してきた。市況回復が思わしくなく、新規オフィスビル供給の集中による「2012年問題」が懸念される現在も、新たな建替え・再開発計画が相次ぎ、大型ビルの新規着工が止まらない。特に、事業法人によるオフィスビル投資が目立つ。この背景のひとつに、企業におけるCRE(Corporate Real Estate:企業不動産)戦略の推進があると考えられる。都心一等地に不動産を持つ企業では、地価に見合った土地の高度利用が求められ、低利用で老朽化した建物を保有するケースでは、CRE戦略が建替えや再開発を進める強い動機付けとなるためである。また、土地持ち企業のCRE戦略に関与して、プロジェクト・マネジメント・フィーや仲介手数料などを狙う不動産会社の営業戦略も、このような動きを加速しているといえるだろう。さらに、リーマンショック後の不動産価格の下落や低金利、企業収益や資金調達環境の改善から、賃借より取得が有利と判断する企業が増加した可能性も高い。