コラム

若年層で増加するソウショク系男子

2010年04月23日

(桑畠 滋)

話題としては少し古いが、昨年、女性との恋愛・結婚に対して積極的でない草食系男子が増加しているということをマスコミ報道等で頻繁に見聞きしたが、私は同時に若者の間で、資格などの取得を通して自身の価値を高めようとする"装飾"系男子(ここではあえてこう呼ばせていただきたい。ファッション誌などで取り上げられているアクセサリーなどで自分を着飾る男子の意味ではない。)も増加しているように感じる。

先日も、高校時代の友人と食事をする機会があったのだが、そういった席で決まって話題に上るのが、友人の誰かが何かの資格を取得したとか、何かの学校に通い始めたといった類の話である。もちろん友人が結婚するとか子どもが生まれたといった話も話題に上ることはあるが、話題の主役となることはあまりない。それよりもこれからのキャリアをどのように形成していくのかといったことに皆必死なのだ。

このことは何も私の周りに限ったことではない。テレビ、インターネットなどでPC、英会話、大学院などの広告を目にする機会も増えている。大学を卒業後、就職した後、夜間の大学院に入学する人も増加している。

何故若者は高いお金を払ってまで、自分を"装飾"することに必死になるのであろうか。内閣府が公表している2009年の国民生活に関する世論調査によると、20代後半から30代前半の男性の6割以上が今後の収入や資産の見通しについて不安を抱えている。バブル崩壊以降、長期的に続く停滞期に社会人となった若者は、絶対に潰れない会社がないことも終身雇用が守られる保証がないことも知っている。デフレの影響から給料が増加しない一方で、急速に進む高齢化を受けて、厚生年金保険料が増加するなど、社会保障負担を中心として若者の負担は増加していく。そのような中、将来への不安を払拭するためには専門性を身に付け、個人としての価値を高めることが必要なのだ。

今後も将来不安の高まりを背景として、"装飾"系男子は増え続けるだろう。しかし、それは決して悪いことではない。なぜなら、将来不安が高まれば高まるほど、専門性を身につけた若者の数が増え、結果的に我が国の未来に幸運をもたらすことに繋がるのかもしれないからだ。
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