中国の金融政策と人民元:適切な出口戦略は中国株に「慎重の壁を登る」展開をもたらす

2010年01月29日

(三尾 幸吉郎)

  • 1月12日に中国人民銀行が預金準備率の引き上げを発表して以来、市場では中国の金融政策の動向に対する注目度が高まり、世界の株価を動かすケースが増えてきている。
  • 過去の金融政策の経緯を振り返ると、中国が最近実施している一連の政策変化は「金融引締め」というより「過度」の緩和状態を徐々に「中立化」する過程と位置づけることができる。
  • 中国の金融政策が、緩やかに「中立化」する過程から本格的な「金融引締め」に転じる可能性を見るため、「景気は過熱領域に入ったか」、「物価は警戒領域に入ったか」、「株価と不動産はバブル領域に入ったか」の3つの視点から分析してみた。
  • 結論としては、現時点では「過度」の緩和状態を緩やかに「中立化」するのが妥当で、これまでの中国の政策対応は適切で、本格的な「金融引締め」が必要な環境にはないと考えられる。
  • 今後の政策対応の見通しは、3月初迄は窓口指導と預金準備率引き上げで銀行融資純増ペースを適切に管理、3月中下旬に対ドル人民元レートの緩やかな切り上げを開始、利上げは米国の利上げを待って9月頃になると見ている。
  • 中国株は、金融・為替政策が引締め方向に変更されることが多くなるため、その都度1~2割程度の下落となろうが、適度な押し目は相場の過熱を防ぐことになり、まさに「株は慎重の壁を登る」の格言どおり、長期的に見れば名目成長率並みに株価は上昇すると見ている。
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