小売販売の動向と少子高齢化による今後の消費支出

2009年09月25日

(竹内 一雅)

■要旨

1.小売販売額は、昨年9月のリーマンショックを期に大きく減少した。一部、持ち直しの動きが見られるものの、回復のペースは遅く、いまだ不振は続いている。しかも、長期的に見ると、小売販売額は、1990年代初頭をピークに低下・横ばいのトレンドにある。
2.現在の急激な景気後退による影響は次第に解消されていくであろう。しかし、長期的にはどうなっていくのであろうか。特に、人口減少や少子高齢化の進展は、今後、消費支出や小売販売額に、どのような影響をどの程度与えるのだろうか。
3.そこで、われわれは少子高齢化の進展による、今後の消費支出への影響を試算した。それによると、全国の消費支出総額は、2010年は2005年に比べ微増の後(1%の増加)、しだいに減少し、2030年には同7%の減少という結果が得られた。このように、少子高齢化の消費支出総額への影響は、毎年1%強程度の減少と、比較的ゆっくりと進行し、さほど急激な影響を与えるものではない 。
4.ただし、世帯主年齢別には大きな差が見られた。今後、継続して消費支出総額の増加が期待できるのは、世帯主が70歳以上の世帯のみである。2005年を基準とすると、2030年の支出総額は、世帯主が70歳以上の世帯で53%の大幅な増加の一方、同60歳代で▲9%、同50歳代で▲11%、同40歳代で▲14%、同30歳代で▲35%、同30歳未満で▲33%であった。特に、40歳未満世帯の支出総額は、今後一貫して減少が続くと予測された。
5.今後、日本では、人口減少と少子高齢化の進展による、消費支出、小売販売額への影響は避けられない。当面、消費支出全体に急激な変化はない一方、誰もが同じ比率で影響を受けるのではなく、地域、顧客年齢、世帯種類、販売品目ごとに、影響に大きな格差が生じる可能性がある。特に、消費支出総額の減少が予測される品目や地域では、業態内および他業態との競合がこれまで以上に激しくなると予測される。今後は、全体として減少するパイの中で、いかに生き残っていくか、これまで以上に、事業者のアイデアと実行力が試される時代になってくると考えられる。

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