CDS市場は正常化したのか?

2009年07月24日

(大山 篤之)

2008年9月のリーマンショック以来、企業の債務不履行を対象にしたCDS(Credit Default Swapの略称)市場のインデックスであるiTraxx Japan(図表細線)は、信用不安を反映して急騰した。2009年3月に500bpを超えたピーク時には、事実上CDS市場は破綻状態に陥ったともいわれた。その後、景気底打ちの兆しを受け、インデックスは一気にリーマンショック以前の水準にまで下落した。サブプライムローン問題発生(2007年7月)以前と比べると、まだ比較的高いものの、短期間でのCDSスプレッド(価格)の下落は、CDS市場が正常化したシグナルといえるだろうか。
そこで、インデックスとその構成50銘柄の単純平均の乖離率(図表太線)の推移をみてみよう。リーマンショック以前は概ね乖離率は0%を中心に変動していたが、リーマンショック以後、マイナス方向に拡大し、昨今も依然として大きな開きがある。
そもそもインデックスは構成50銘柄を、まとめて取引する場合の価格であり、本来、構成銘柄を個別に取引した価格平均と一致し、乖離が生じた場合は平均に回帰すべきものである。しかし、リーマンショック以来、この乖離が恒常化して、平均回帰しないのは、全ての構成銘柄を個別に売却し(高いものを売る)、インデックスを購入する(安いものを買う)ことで、無条件に利益が獲得できる状態を意味し、市場の価格付け機能及び市場の取引機能が未だ正常でないことを示唆している。
CDS市場は、CDSスプレッド水準の下落により一見落ち着きを取り戻したかに見えるものの、市場が信用力尺度として再び機能し始めるには、今暫くの時を要するのかもしれない。

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