会社法制はどこへ行くのか

2009年06月24日

(村田 敏一)

■目次

1--------会社は誰のものか
2--------効率性と公正性の調和
3--------会社法制と市場(証券)法制
4--------会社法制の行方

■introduction

敵対的買収防衛策を巡る論議の高まりや、雇用問題の顕在化を受け、近時、またぞろ、「会社は誰のものか」という議論に盛り上がりが見られた。「会社は誰のものか」という議論は基本的には不毛である。倒産の危機に瀕すれば、会社債権者によるガバナンスがぐっと近景に躍り出、株主は単に残余財産分配請求権者に過ぎない。では、何故株主のみが経営者を選解任可能なのか、その根拠が問われる。まず、比較法的に見れば、ドイツの大企業では、共同決定制のもと、資本(株主)と労働勢力が協働して経営者を選任しており、その意味で株主の権利は縮減している。もっとも、共同決定制への投資家の評価は頗る低い。海外資本の吸引が国家的課題である我が国では政策的な理由により採り得ない選択肢と説明できる。また、経営者の選任権者を多様なステーク・ホルダーに分散した場合には、各選任権者間での合理的な権限分配調整原理に決め手を欠き、結果的に経営の混乱・停滞を招き易いという説明も可能であろう。米国での論争を見ても、株主の無機能化現象を背景に、株主総会の権限縮小論が主張されたが、一方で、特に企業組織再編時における株主総会機能を重視する見解に対して、有効な反論はなされなかった。もっとも今日では、機関投資家によるガ
ガバナンス機能発揮が活発化しており、株主の無機能化現象はその根拠を喪失している。

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