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「少子化対策」とは何か?
2007年09月06日
(土堤内 昭雄)
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私はいつも「少子化対策」という言葉に違和感を持っている。なぜなら、この言葉からは合計特殊出生率や出生数といった子どもの数に関する議論が中心となることが多いからだ。もちろん、仕事と子育ての両立支援など子どもを生み育てる環境を整え、子どもを生みたい人が生んだ結果、出生数が増えることは大いに喜ぶべきことなのだが。
先日発足した安倍改造内閣では、内閣府特命担当大臣の一人として上川陽子さんが少子化対策・男女共同参画担当大臣として入閣した。新閣僚に聞くテレビ番組のインタビューでも、「少子化担当大臣としてどのようにして出生数を増やすことに取り組むのか?」など、インタビュアーが子どもの数に係わる「少子化対策」の質問に終始していた。
その背景には、「少子化対策」という言葉に起因する少子化政策に対する誤解があるように思えてならない。現在、「少子化対策」と呼んでいるポリシーミックスの本質は、本来、子どもの数が減っても増えてもそれには無関係な性格を持つはずのものである。それは社会が持続的に発展するために、将来を担う次世代育成を支援する総合的な政策体系であるべきだろう。したがって、まず子ども自身の育ちを念頭に、子ども自体を政策クライアントとして位置づけることが重要だ。
実際、政府は2003年に次世代育成支援対策推進法をつくり、04年には「子ども・子育て応援プラン」(新々エンゼルプラン)を発表し、「若者の自立とたくましい子どもの育ち」、「仕事と家庭の両立支援と働き方の見直し」、「生命の大切さ、家庭の役割等についての理解」、「子育ての新たな支え合いと連帯」を重点課題とした。さらに06年6月には新たな少子化対策として、子どもの成長に応じつつ総合的に子育て支援策を講じるとともに、働き方の改革を推進するとしている。
内閣府のホームページを見ると、内閣府特命担当大臣(少子化対策、男女共同参画)の英文表記は"Minister of State for Gender Equality and Social Affairs"となっている。「少子化」を直訳したような"Declining Birthrate"という表現はどこにも見当たらないし、諸外国においても同様の政策は、家族政策"Family Policy"などと呼ばれている場合が多いのである。
急速に進展する高齢化に対して「少子化」という言葉が対比的に使われるようになったことはうなずけるが、本当に「少子化対策」が効を奏するためには、「少子化対策」とは何か、その目指す方向・内容を正確に国民に伝えることが重要ではないだろうか。少子化担当大臣を「子ども・子育て応援担当大臣」と呼ぶだけでも、政策の方向性が随分と分かりやすくなるような気がするのだが・・・ 。
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