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クリエイティブクラスの獲得と地域活性化
2007年06月20日
(池邊 このみ)
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「クリエイティブクラス」という新しいライフスタイルを牽引する階層が注目されている。文字だけをみると特定の文化人や知識階級の名称であるかのようにみえるが、「クリエイティブ」という能力は、人間誰でももっており、職種や学歴による違いではないというのが提唱者である米国のリチャード・フロリダ教授の持論だ。
トヨタの「カイゼン運動」の観察から生まれたというこの理論によれば、クリエイティブな人間のもつ自己表現ができる能力こそが経済成長の原動力となる。クリエイティブクラスから発信される新しいアイディアやイノベーションを育てることのできる寛容性をもつ企業や社会、都市には人が集まり発展するという構図だ。
すでに米国では、このクリエイティブな人材を確保するために、雇用形態やオフィス環境に変化が起きはじめており、GoogleやSASなど世界をリードするIT産業のオフィスや人材管理は、労働者の知的活動のポテンシャルを最大化するために各種の工夫をこらしている。オフィスでも自宅でもなく、オフィス空間をもつコミュニティ施設などが新しい仕事場となるといわれ、すでに従来型のオフィスビルを売却する事例もではじめている。
このような変化を鑑みると、日本の地域再生や地域活性化の目的や手段を再考する必要性を強く感じる。従来行われてきたような大規模複合商業施設の誘致など、一過性の集客による消費地としての再生は、短命である。活性化のターゲットとすべきは、働く人や住まう人の潜在力を活性化できる就業環境や居住環境だ。それにより彼らの生産性を高め、地域をリノベートできる力や時間を創出する。
新しいライフスタイルを牽引するクリエイティブクラスに選ばれる居住環境やコミュニティは、新しい教育システムや保育システムを備えた施設や、新しいワークスタイルを提案するオフィス、創造的な活動の発表などを通じて互いの能力を刺激し合えるコミュニティ施設などを備えるものとなる。彼らのニーズを満たす多様な仕掛けを持ち、持続的に発展をし続けるまちとして常にイノベーションを続けていくことが求められる。
4月より、独立行政法人 都市再生機構の都市デザインチームリーダーを兼務しているが、昭和30年代や40年代に創られた巨大な団地のストック再生が急務である。改めて、団地を見てみると、居住施設の建替えは必要であるものの、美しい並木をもつ道路空間や団地の中を散策できる歩道空間や公園など、50年近くかけて維持されてきたオープンスペースは、次世代に継承すべき貴重な社会的資産となっている。人口減少社会を迎えた現代にあって、この資産を活かし、クリエイティブクラスを惹き付ける職住遊の混在型の新たな生活文化を提案する拠点として再生する方法もあるのではなかろうか。
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