オランダの新保険年金財務規制 -EU財務評価フレームワーク実現の先駆的試み-

2005年08月25日

(田中 周二)

1.
近々、導入が予定されているオランダの保険会社および職域年金に関わる財務規制は、いくつかの先駆的な要素を含んでおり、今後の国際的な規制体系の動向を占う上で注視すべき動きであると考えられる。
2.
1つは、年金保険庁(PVK)がオランダ中央銀行(DNB)に合併された(2004年10月)ことに象徴されるようにオランダでは、銀行・保険・年金という3分野に共通の規制のプラットフォームが作られており、それぞれの規制の整合性がとられていることである。

3.
次は、EU の「年金基金指令」、IASB(国際会計基準審議会)の保険・年金負債の公正価値評価の議論、IAA(国際アクチュアリー会)のソルベンシー評価報告書、銀行の国際的規制であるBaselⅡなどの最近の諸規制や提案を先取りして採り入れており、そのような議論の場で積み残された課題を、オランダ国内での各方面での意見を集約し、その合意を採り入れたソルベンシー規制体系(FTK)を構築していることである。
4.
最後に、オランダは小国とは言え、歴史的に早くから国際化の経験を豊富に蓄積しており、職域年金制度では、引退年齢や掛金、給付の弾力化の実現(Witteveen レポート)、パートタイマーの公平取り扱いなど社会制度改革の先進的な取り組みを行なっており、「オランダの奇跡」と呼ばれる経済活性化を成功させた実績のある国でもある。保険規制においても、従来の純保険料式の責任準備金システムを大胆に変革し、保険債務を時価評価するとともに、リスクベースの必要資本を強制することにしており、EU ソルベンシーⅡが導入されても円滑に対応できるように準備を進めている。
5.
わが国でも、よく知られているアングロサクソン・モデル(英・米・カナダ・オーストラリアなど)の保険年金規制とは異なる独自のアプローチを研究することは、今後のEU・国際規制のあり方を占う上で大いに参考となろう。

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