ブーツ社の決断

2004年11月01日

もはや旧聞に属することではあるが、イギリスのトップ50基金の一つである小売薬局大手のブーツ社が2001年11月に公表した年金資産23億ポンド(4000億円)をすべて(物価連動債を含む)債券運用に変更した決断が改めて注目されている。
ブーツ社は、2001年7月からおよそ15ヶ月間かけて、すべての株式を売却し、トリプルAの長期債を購入した。その債券ポートフォリオは、年金負債の構成にマッチするよう加重平均期間30年で25%の物価連動債も組み込んだものである。その後、2002年には、3億ポンドの自社株買い戻しを行った。これら一連の見直しの結果、株式市場の大幅下落の影響を逃れたばかりでなく、法人税で1億ポンド、運用手数料の現在価値で1.25億ポンドと、合わせて年金資産の10%近い費用の節約したのであった。
これらは、好運も手伝ったが、MM(モジリアニ・ミラー)の理論に始まる金融財務論の教えに従ったものであった。年金基金は、企業と一体化してみれば金融子会社と同じであり、株式を年金基金で保有するのも、親会社が自身で保有するのも経済的実態は同じである。税金を考えるなら、年金では債券のみ保有するのが正しい。しかし、英米でもブーツ社以外に、このような決断は、あまりなされていない。一つのパズルである。

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