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企業経営・産業政策
円高の長期化と国内産業
2004年02月01日
(熊谷 潤一)
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為替市場では、これまで長期的な円高が続いてきた。変動相場制以降の円高進展の度合いを見た場合、円は対ドルレート、実効レートとも、名目ベースで概ね300%、実質ベースで50%増価したことになる。
持続的な経常収支黒字は、「対外純資産残高の蓄積⇒外貨に対するリスクプレミアムの増加⇒円高圧力の増大」に結び付くことから、黒字基調が続く日本の経常収支も為替レートを円高に向かわせる効果を持つ。
ISバランスの観点から見た場合、日本の経常収支黒字については緩やかな減少こそあれ、2010年代半ばまで黒字解消は見込めない。ただし、経常収支の黒字要因が「貿易収支」から「所得収支」に転じる可能性はある。したがって、たとえ貿易収支が赤字化した場合でも、リスクプレミアムの観点から想定される円高圧力は、なかなか軽減しないだろう。
経済のグローバル化による世界的な規模での価格調整が続く中、内外価格差の大きいサービス価格の是正が日本の物価上昇を相対的に抑制することとなる。これが、投入コスト削減などを通じて、企業物価ベースで見たPPP(購買力平価)をさらに円高方向にシフトさせる可能性があり、物価変動格差の観点から見ても、円高圧力はなかなか収まらないだろう
交易条件、損益分岐点、貿易特化係数を使いながら、これまで長期にわたる円高が国内産業の経営環境にどのような影響を与えてきたか確認してみると、80年代半ば以降の円高加速の前と後で交易条件改善により良好な収益環境を維持した産業と、円高などの影響で収益環境が悪化した産業とに大別することができる。
長期円高の可能性に加え、今後は新興国との競争激化も想定されることから、80年代半ば以降の円高加速に対応してきた輸出産業をはじめ、国内産業は今後とも厳しい経営環境に直面する可能性が高い。
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