松村 徹()
研究領域:
研究・専門分野
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■見出し
1.東京のオフィス市場動向-2003年の展望-
2.需要純減の可能性-オフィスの「2010年問題」を視野に-
■要旨
景気の本格的な回復が見込めない現状ではオフィス需要の伸びは期待できず、2003年の大量供給による空室率の上昇や賃料低下は避けられない。テナント誘致競争ではゼロサムゲーム的な展開が予想されるが、会社合併や事業統合などを背景に、新旧の大規模ビルはオフィス統合の受け皿となる可能性が高い。また、オフィス統合のあおりで解約が発生する中規模クラスのビルでも競争が激しくなるが、適切な運営管理を行っているビルの解約リスクや賃料引下げリスクは相対的に小さい。2003年問題は、プロパティ・マネジャーやJREITにとって、市場が悪化する中で抵抗力を示し、投資家からの評価を高めるまたとない機会といえる。
東京23区のオフィスワーカー数は、2000年から2010年の10年間で5%減少すると予想される。これは、最悪のケースで370万m2、丸の内ビルディング23棟分に相当するオフィス需要が市場から消えることを意味する。特に、2007~2009年前後には団塊の世代の定年退職による大きな落ち込みが予想されることから、オフィス市場の「2010年問題」として注意を喚起すべきである。市場関係者にとって、これまで経験のないオフィス需要の減少を視野に入れた長期戦略の構築が必要である。
これまで供給が需要を生む構造にあった東京のオフィス市場で需要減少が予想される以上、優良開発の増加は事業格差や地域格差を拡大し、デッドストックを大量に発生させる可能性があることに留意し、都市政策を供給喚起型からストック調整型や需要誘導型に転換すべきである。
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