株主構成とコーポレート・ガバナンス

1999年06月25日

(新田 敬祐)

 わが国には、「持合などによる株式の安定保有」という特徴的な株式保有構造があり、コーポレート・ガバナンスに大きな影響を及ぼしてきたと言われている。本稿では、安定保有や持合に焦点を当て、株主によるガバナンス効果を明らかにすることを試みる。
分析対象を東証1部上場910社(金融を除く)、期間を1988~1997年度の10期とし、ガバナンスへの影響力を示すものとして「持株比率」を、ガバナンス効果を評価する尺度として株価や業績情報などの「ガバナンス指標」を用いた。また、分析手法として、パネルデータによる回帰分析を採用した。
まず、主な株主の影響力(持株比率)の変化とガバナンス指標の変化の関係を分析した。この結果、安定保有比率・持合比率とガバナンス指標の間には負の相関があること、一方、外国人持株比率とガバナンス指標の間には正の相関があることが示された。次に、株主の影響力の大きさ(持株比率の水準)とガバナンス指標のパフォーマンスの関係を分析した。この結果、持合比率が高い企業グループのガバナンス指標のパフォーマンスは、持合比率が低い企業グループと比較して、相対的に悪化する傾向があること、一方、外国人持株比率が高い企業グループのパフォーマンスは、相対的に改善する傾向があることがわかった。
一連の分析結果から、対象期間においては、安定株主・持合株主がコーポレート・ガバナンスにマイナスの影響を与えてきたこと、対照的に、外国人株主がプラスの影響を与えてきたことが示唆された。この実証分析を元に、株主のガバナンス活動と企業パフォーマンスとの因果関係にまで言及するのは、行き過ぎかも知れない。しかし、本稿では、分析結果に現れたガバナンス効果の差異が、主に株主のコーポレート・ガバナンスへの関わり方の違いにより生じたものと考えている。

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