起業家経済の発展と中小企業

1997年03月25日

(小野 正人)

■目次

1. 再び中小企業の時代
2. 雇用創出の重要性
3. 起業家経済システムの活用

■introduction

ここ1、2年ベンチャー・ビジネスが再び脚光を浴びている。今回は戦後3度目のベンチャーブームであるが、過去2回よりも裾野が広く持続性を感じさせる。日本経済の停滞が長期化する中で各界の問題意識は大きい。ベンチャーのような新興企業に対し、変革の原動力として強い期待感が寄せられており、またベンチャー支援に積極的な意見が、中小企業だけではなく、大企業、政府・自治体、大学など幅広い層に広がっているからである。
では、第3次ベンチャー運動がこれほどまで拡大している背景は何か。
(1)低成長下の雇用問題:低成長と産業空洞化が現実に長期化する中で、日本の安定的な雇用制度は機能が低下している。国民の経済に対する期待は次第に雇用にシフトしており、企業も雇用確保を目的にベンチャーを活用する動きがみられる。
(2)創業・新興企業の少なさ:にもかかわらず、雇用を牽引する企業群が見当たらない。ベンチャーの輩出源となるべき中小企業も、不況や高齢化にともなう後継者難なども加わって廃業率が上昇している。
(3)ベンチャー主導のイノベーション:停滞への危機感の中で、新興企業の組織運営や彼らの生み出す技術や発想に、各層から期待が強まっている。
かくして、創業への期待度がかつてないほど高まっているが、現状はその逆となっている。統計をみると、最近の日本の新規開業率は4.6%と、高度成長期の6%台よりも一段と低下しており、米国の開業率(15.4%)と比べて大きな格差がある(注1)。実際、ベンチャーキャピタルや金融機関が懸命にベンチャー・ファイナンスを拡大しても、見合った企業がみつからず、支援策やファイナンス等の供給力が、実際の需要(ベンチャー企業)を大きく上回っているようだ。それだけに腰を据えた取組みが必要になってくる。

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