ストライキを忘れた英国労働者

1996年07月01日

(ジョン・ドウ)

■見出し

はじめに
1.労働市場はどう変化したか
2.なにが労働市場を変えたか
3.改革の成果はどうか
結論

■introduction

過去20年の英国労働市場は、との先進国よりも劇的な変化をとげたといえよう。
第二次大戦後の「ゆりかごから墓場まで」の福祉国家のあとを受けて構築された労働市場は、いまや欧州で最も硬直性の低い労働市場になったといわれている。今日の国際競争社会にあって、英国は欧州の歩むべき道を示している。
本稿の目的は3つある。(1)いかにして労働市場の構造が変化したか、つまり、いかにして市場がより柔軟になったかについて解説する。次に(2)市場の構造変化をもたらしたいくつかの理由を指摘する。その変化は強制されたものか、それとも自然の変化の過程だったのかについてである。(3)英国の"新しい"労働市場が同国経済に及ぼした影響をマクロ・レベルと個人レベルで評価する。
そうすることによって、英国の現状に光をあててみたい。英国では現在、失業は減少し雇用は増加に転じているが、雇用不安は根強く、いわゆる「国民の自己満足度(feel-good-factor)」がいまなお低いことが目立っている。
本稿は、格別アカデミックな研究論文を意図したものではない。ただ、このテーマを概観し、問題を提起しつつ、その解明を試みて読者の参考に供したいと願うものである。随所で欧州諸国とアメリカの状況との比較を行う。日本の労働市場の硬直性は異常に高いものになっているが、本稿は今後の日本の変化について示唆できるところがあるかもしれない。

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