研究領域
一般事業会社におけるデリバティブ利用の実態-日米比較とその示唆するもの
1996年04月01日
(栁田 宗彦)
(乾 孝治)
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<要旨>
全国の証券取引所に上場している事業会社(金融機関は除く)2,065社を対象としてデリパティブ利用実態調査を行った。調査結果によれば、わが国では41%の企業がデリパティブを利用していると答えており、米国の41%と同水準となっている。商品としては、先物為替予約および金利スワップを中心に利用されており、特に企業規模が大きくなるほど利用率も高くなり利用商品の種類も多くなっている。利用目的は、為替リスクの回避が最も多く、資金調達コストの低減、実際のキャッシュフローの確定が続いている。一方、米国では主にキャッシュフローの確定や会計利益の安定を目的に利用されている。
デリパティブの利用状況を原資産別にみると、日米ともに為替と金利が中心になっているのは共通であるが、米国では、商品や株式に関わるデリパティブの利用頻度がわが国のそれを大きく上回り、多様なビジネスリスクの管理手段として、デリパティブが広く利用されているようである。
リスク管理の手段としてストレステストやバリュー・アット・リスクを利用している企業は、わが国では利用者全体の1%しか存在しないのに対して、米国では約7割にも達している。為替リスクヘッジなどの限定的な利用が中心であるわが国企業にとって、そうした高度なリスク管理は必ずしも必要ではないのかもしれないが、両国間のリスク管理レベルには相当な格差があるようだ。
今後のデリパティブが健全に発展し、効率的経済活動に資するためにもデリパティブの外部への透明性としての会計・ディスクロージャー制度の整備ならびに内部管理としてのリスク管理をさらに整備していくことが、必要であろう。
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