中小企業オーナーの経営意識 -厳しい時代に生きる中小企業オーナー経営者の悩み-

1995年05月01日

(栗林 敦子)

<要旨>

  1. 中小企業にとっての経営環境が厳しさを増す昨今、従業員規模100人以下の中小企業オーナーにとっての経営上の最大の課題は、「人材の確保」と「売上げの伸び悩み」である。また、「価格競争への対処」もそれに次いでいる。
  2. これらの経営上の課題は企業が設立されてからの期間、従業員規模、年間売上げ額規模などの特性で異なる。例えば、昭和20年代以前に設立された企業とそれ以降に設立された企業では、「収益率の改善」と「売上げの伸び悩み」のウェイトが異なっており、前者は収益率を、後者は売上げを課題としている。また、小規模企業の方が「将来の見通しが立たない」や「売上げが変動して経営基盤が不安定」をあげる傾向がある。業種別の課題は鮮明にならなかった。
  3. 中小企業オーナーの経営方針とでもいうべき「マネジメントスタイル」の代表的なものは、「何でも自分が最終決定に携わる」「情報は内部で共有化」「従業員の福利厚生を重視」といったものであるが、これらも従業員規模で見た場合、規模が小さいほど経営者への権限集中がみられるなど、企業特性別の特徴がある。
  4. 次に、マネジメントスタイルを因子に集約すると、「リーダーシップ」「ワンマン」「人材重視」「フレキシブル環境適応」「組織未成熟」の5つとなる。経営上の課題は前述の企業特性別に特徴があることが分かったが、マネジメン卜スタイル因子でみると、そのスタイルで実現できていない部分が課題としてあげられることがわかった。つまり、マネジメントスタイルが分かれば課題が把握できるということである。
  5. 中小企業オーナーの課題を解決するというニーズに基づく各種ビジネス・チャンスが考えられるが、そのために今後は、彼らのマネジメン卜スタイルとその要因について、詳細に検討する必要があるといえよう。
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