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米国において進む金融商品の開示とデリバティブの対応 -米国の最新動向とわが国への示唆-
1995年02月01日
(栁田 宗彦)
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<要旨>
金融商品には、いくつかのリスクが付随している。しかも、近年、金融市場におけるボラティリティ(変動)が増大している。そのため、低コストで機動性の高い取引ができるデリバティブ(派生金融商品)を利用したリスクマネジメントの重要性が増している。デリバティブのリスクは他の金融商品と比べて特殊なものではないが、複雑に組み合わされている場合があるため、適切なリスクマネジメン卜が求められる。
米国において金融商品のディスクロージャーが充実してきている。オフバランス取引及び信用リスクについてのFAS105号、すべての金融商品の時価開示を求めるFAS107号が既に公表されている。これらのディスクロージャーは必ずしも完全なものではないが、有益な情報を提供している。更に、現在、すべてのデリバティブを時価評価し、ヘッジ会計を大幅に変更する方向での検討が行われている。
1994年はデリバティブに関する話題が多い年であった。各種レポートの公表やデリバティブによる損失の話題もあり、今後のデリバティブ市場を考えるうえで大事な年であったといえよう。各種のデリバティブに関するレポートで共通して強調されているのは、(1)会計及びディスクロージャーの充実、(2)リスクマネジメント体制の確立、(3)経営陣の関わりの必要性、であった。
これらの動きlこ対応して、従来のディスクロージャーを補完する形で、デリパティブのディスクロージャーの充実を求めるFAS119号が1994年10月に公表された。FAS119号は、デリバティブの保有目的別に取引内容、リスク及び会計方針についてのディスクロージャーを求めている。また、トレーディング目的の場合には、会計期間における取引の適正価額総額の平均残高やトレーディング損益のディスクロージャーをも求めている。
米国と比べるとわが国の金融商品に関する会計処理・ディスクロージャーは、まだ遅れている。デリバティブの経済的効果が、財務諸表に正確に反映されていない。また、それを補完するディスクロージャーがわが国ではほとんど行われていない。
わが国における今後のデリバティブの発展のためには、企業のリスク状態を表すディスクロージャーを充実し、市場の透明性を確保することがまず必要である。更には、金融商品全般について、ヘッジ会計をも視野に入れたデリバティブの時価評価の導入等、包括的で一貫した会計処理を考えていくことが肝要であろう。
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