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情報機器がつなぐ現代家族の絆 -ポスト共住・共食を超えた家族コミュニケーション
1995年01月01日
(岸田 宏司)
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<要旨>
近年、コンピュータや通信技術を始めとする電子装置の発達と、その地球規模での普及にともなって、情報化は、人類社会の大きな流れとなってきている。その影響が、企業だけでなく、家庭にも様々な形でおし寄せており、家庭の情報化が、家族の人間関係のありように大きな影響を与えている。本稿では、共住、共食が崩れる現代家庭に情報装置が導入されるとき、その家庭にはどの様な変化が起こるかという視点から現代家族像へのアプローチを試みた。
家族がそれぞれ個人としての生活の場を持つようになり、家族との対面コミュニケーションが希薄になっても、留守番電話、ポケットベル、パソコン通信などの情報機器がバラバラに生活する家族をつなぐ道具として有効に機能している。家族は、一緒の場所に住めなくとも電話回線上に家族をつなぐネットワークを築き始めている。
ハイテク機器で重装備された共働き家庭では、ハイテク機器による家事の徹底した合理化と情報機器による家族の情報ネットワーク化によって、夫婦で共に働き、共に家事・育児をする性別役割分業を超えた家族関係を維持している。情報機器は家族間のコミュニケーションにだけ機能するのではなく、家族の形態にまで影響している。
家庭にハイテク情報機器を持ち込むことによって、家庭と職場の境界線が無くなり、家庭における夫婦間コミュニケーションの時間が奪われたり、家族が知らない情報機器を独自で夫が仕事で持ったことによって、家族以外の人とのコミュニケーションが手軽になり、その結果、冷えかけた夫婦関係を完全に崩壊させるなど、情報機器が家族の求心力を強める方向に機能せずに、反対に弱める方向に機能した家族もあった。
大量に家庭に入り込んだ情報機器が家庭の人間関係に与える影響を事例調査結果を統合してみると、情報機器には、次の三つの機能があることが明らかになった。一つは、離れて暮らす「家族を結びつける機能」、二つ目は、家族間の情報機器によるネットワークの構築によって家族の自立性を確保する「家族を個人化する機能」である。三つめは、情報機器やホームセキュリティシステムや食器洗い機などのハイテク家電を使うことで、夫婦の性別役割分業が事実上形骸化し、結果的に従来の家族観を払拭する「家族を再構築する機能」である。そして、注意すべき点として、情報機器は、その使い方によっても家族関係を維持する方向ではなく、全く逆の家族をバラバラにする方向に機能するも明らかになった。
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岸田 宏司
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