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シルバーサービス事業の現状と今後
1994年10月01日
(河野 正通)
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<要旨>
高齢化の急速な進展に伴い、シルバーマーケットへの関心が高まっている。経済力ある高齢者が増加し、その多様化するニーズに対応するために、様々な民間のシルバーサービスが生まれてきている。しかしながら、市場規模ひとつをとっても、シルパーサービスの実態はなかなかつかめていない。本稿では、公的サービスには財政的な限界があるなかで、今後の高齢社会でますます重要性の高まってくるであろう民間のシルバーサービスについて、"事業としての現状"を明らかにし、これからのシルパーサービスを考察してみた。
本調査からは、昭和60年以降に開始された事業が半数を超え、シルパーサービス全体としては未だ揺籃期にあることがわかった。5年前の前回読査に比べると、サービス業の参入が増えシルバーサービス産業のソフト化が進んでおり、事業規模をみると中堅企業の割合が増えてきている。事業の中では、特に、「在宅介護・ホームヘルプサービス」が著しく伸びているが、これは介護の流れが老人ホームなどの「施設対応」から「在宅介護」へ変わってきたことを反映している。将来の参入分野でも、在宅介護関連への参入意向が高くなっている。
収益状況については、赤字の事業が3割と厳しいが、不況下にもかかわらず前回調査より黒字事業が若干増えており、景気にはあまり左右されない構造が窺える。将来の黒字予想はほぼ5割、赤字は1割にとどまっている。6割の事業者は事業拡大を積極的に進めたいとの意向を持っている。
以上のように、シルバーサービス事業者は今後の発展を予測しており、産業としての拡大が期待されるが、その事業者が認識している主要な課題は、『顧客の把握』、『サービスにかかるコスト』、『人材不足』、『行政の対応』である。
現在のシルパーサービスの展開状況は、サービスが日常生活を営む上で必須かどうかという「必需性」と、市場競争で取引されているかどうかという「マーケット性」から分析すると、介護が必要な人、虚弱な人等の特定された層の生活必需的な分野に偏っており、マーケット性の強い健常者を対象にした商品サービスについては手つかずに近い状況にある。この手つかず分野と既存サービスの今後の伸びを考え合わせると、シルパーサービスは今後大いに発展性のある市場分野であるといえる。
これからのシルバーサービスでは、多様化するニーズに対応して、在宅サービスと施設サービスの組み合わせなど、"複合的な形でのサービス提供"がさらに重要になると思われる。そのためには、事業者が単独でこれに対応するには限界もあり、事業者間の幅広いネットワーク作りが必要である。こうして、サービスの幅が広がり、対象マーケットも拡大することで、シルバサービスの社会的認知や信頼性が高まっていくという良循環を作り上げていく必要があろう。
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河野 正通
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