株式市場の構造とその変化(1)

1992年08月01日

(川北 英隆)

<要旨>

  1. 株式市場は依然として成熟市場への発展途上にある。この視点から、エポックである1965年前後の証券不況期と、今回のいわゆるバブルの時代について、個別現象とその経済的な背景を比較し、リスク管理、市場分析などに資することとする。
  2. 証券不況期には、市場取引制度の不透明性、証券会社の役割の不透明性、スパイラル的な価格形成などの多くの問題があった。そのうち最大の問題は、証券会社が株式の買いポジションを、それも市場金利で調達した資金を用いて形成し、相場を作ったことである。これらは、証券取引法の改正などを経て一応の改善をみた。
  3. バブルの時代は、現在の株式市場が依然として、証券不況期と同様の構造にあるという事実を明らかにした。その最大のものは、かつての証券会社の株式買いポジションと類似のポジションを、金融機関が形成したことである。つまり、金融自由化の中で資金調達コストが上昇して市場金利に接近しているにもかかわらず、意図したとは言えないまでも実質的に、その高コストの資金を用いて株式の持合い・安定保有を強化したことがそれである。また証券会社も、株価が上がれば収益も増えるという固定・売買金額ベースの株式売買委託手数料体系や、損失補填というオフバランスでの株式買いポジションの形成など、証券不況期と同様の体質を維持していた。
  4. 現在の株式市場の最大の問題点は、金融機関の株式保有が膨大になっており、金融自由化・金利自由化の流れとそぐわず、極めてリスキーになっていることである。自己資本概念の整理、区分経理など内部管理体系の充実、リスク管理の高度化などによって、金融機関の行動を是正することが望まれる。自己株式取得問題も、このような金融機関のリスキーな株式の保有をいかに是正し、本当の意味での機関投資家として機能させていくかを検討する中で考えなければならない。
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