研究領域
輸入水準の国際比較 ―― 日本異質論の統計的検証 「Is Japan still an“outlier”?」
1992年06月01日
(竹中 平蔵)
(石川 達哉)
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<要旨>
日本の貿易黒字の再拡大に伴って日米の摩擦が高まり、米国からは「日本は市場メカニズムの通用しない異質な国」とする日本異質論が台頭している。その背景で、米国においては経済学的見地から日本の貿易構造が異質かどうか検証しようとする分析が行われてきた。かつてのISバランス的なアプローチを離れ、国際的なクロスセクションデータを用いて、国際的な尺度から見て日本の貿易構造が異質なのかどうかを検証しようとするのが特徴である。
こうした分析では、貿易黒字ではなく、輸入水準ないし輸入のGDP比に焦点が当てられている。これを経済規模・天然資源の賦存状況・輸送費用(貿易相手国からの距離)によって説明したバラッサの推計モデルでは、日本の輸入は有意に過少と計測され、民本は異質な国と結論づけられている。
経済分析における日本異質論に対して日本サイドから1つの回答を示すべく、バラッサのモデルに準拠しつつ推計方法上の問題点を修正し、プラザ合意後の円高期を含む最新データを使用しても日本の輸入が過少と言えるかどうか改めて統計的検証を試みた。
使用するデータを十分吟味して計測を行った結果、最近時の日本の輸入は経済規模や輸送費用等に見合ったものであり、必ずしも過少とは言えないことが明らかになった。従って、日本の国内市場が閉鎖的だとか、日本の輸入構造が異質だと結論づけることはできない。
但し、日本の輸入構造が必ずしも異質でないことは、国際的に見て平均的な貿易障壁が存在することまでも否定するものではない。日本の関税率は全般的に特に低い水準であるが、一部の品目で輸入制限等のグレーな領域が存在するのも事実である。
自由貿易体制の維持推進のためにも、残存する輸入障壁を円滑に撤廃し、一層開放された国内市場にすることが求められよう。
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