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ニッセイ基礎研長期モデルとシミュレーション分析 ― 今後の日本経済の長期的動向を対象に ―
1992年04月01日
(稲田 義久)
(長期分析プロジェクト・チーム)
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<要旨>
経済審議会で新経済5ヵ年計画の審議が開始される等、長期見通しが論議を呼ぶ状況となっている。当研究所では長期分析プロジェクト(主査:神戸学院大学稲田義久助教授)を設置し、このたび計量モデル(ニッセイ基礎研長期モデル)を開発するとともに、今後の日本経済の長期的動向を対象にシミュレーション分析を行った。
今回、目的としたのは、「日本における急テンポな人口高齢化と社会保障の変化が貯蓄、労働供給の変動を通じて経済にどのような影響を与えることになるのか、社会保障と経済との相互作用も含め、多面的な検討ができるようなモデルの開発」である。
当モデルは「供給決定」型の貯蓄に重きを置いたタイプとしており、経済(GNP関係)、政府(中央・地方政府)、同(社会保障基金)、賃金・価格、労働の5ブロックからなる連立方程式体系である。また、民間、政府(中央・地方政府)、同(社会保障基金)の制度部門別に所得支出勘定と資本調達勘定が完備しており、部門別の貯蓄および貯蓄・投資バランスも検討できるものとしている。
モデルにおいて外生変数を想定したよ、2010年度までの期間についてシミュレーション分析用のベースラインの設定を行った。このベースラインは、実質GNP成長率が90~95年度平均の3.7% から2005~2010年度平均の2.5%へと鈍化、総貯蓄率が高齢化等を映じて、1990年度の20.3%から2010年度の15.4%に傾向的に低下等の内容となっている。
次に、シミュレーション分析として、ベースラインに比して各年度とも一層の労働時間短縮がなされた場合の実質GNPへの縮小効果を試算するとともに、技術進歩率上昇、労働力率上昇、民間貯蓄率上昇の実質GNPへのプラス効果について試算を行ってみた。また、社会保障関係について社会保障給付額の変化や、年金支給開始年齢の変更の影響を試算した。
以上の分析からも、労働時間短縮等、今後実質GNP成長率に対して引下げ方向のカが増していく中で、一人・時間当たりの生産性向上の重要性、就業意欲を持つ女子・高齢者にとって働き易い環場作り、貯蓄の重要性―などが改めて認識されたといえよう。また労働力人口の減少、余暇時間の増大傾向の中で、これまでのGNP統計を補完、ないしは代替する新たな統計概念の検討と確立の必要性も浮き彫りとなった。さらに、今後より詳細なコホート分析や、各種のミクロ分析によって、人口高齢化等の影響が一層的確に予測可能となるデータの充実が望まれる。
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