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投資情報から見た日本の株式市場の構造
1992年03月01日
(遅澤 秀一)
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<要旨>
東京証券取引所1部上場銘柄は、機関投資家が投資対象とするユニパースと位置付けられており、市場ポートフォリオとして選択されることも多い。しかし、市場の情報に対する効率性に関して、疑問が投げ掛けられている。
日本の株式市場は、大手証券会社や機関投資家主導の大型株と個人投資家主導の小型株の2つの市場に分断されている可能性がある。マス・セールスを前提とする大手証券会社、流動性の制約を受ける機関投資家と、投機的な個人投資家とは、異なる投資行動を取る。規模別ポートフォリオのリスク構造も、この仮説と整合的な結果を示す。
80年代後半は、大手証券主導のシナリオ相場の影響で、ファンダメンタルな情報が株価に反映されにくかったと言われている。シナリオ相場とは、マクロ・ミクロ情報をマーケット情報に質的に転換し、情報の寡占化を計ることによって、市場への影響力を高める情報戦略と定義できる。シナリオ相場が成立したのは、機関化が進行する過渡期であったからである。すなわち、低金利下において、機関投資家と個人投資家の市場での併存、特金等の回転が速い資金の出現、機関投資家の情報戦略の未熟さ等が原因となった。
日本では会計情報も、ファンダメンタルな情報からマーケッ卜情報に転換されてしまう度合いが高いため、安定性に欠ける。また、会計制度の問題や日本の商慣行等の問題もあり、会計情報を投資に有効活用するのは容易ではない。
大手証券会社の一元的情報に依存できた時代は終わった。今後は機関投資家も、内部アナリストの充実やデータベースを含めた投資情報支援システムの構築等の情報戦略が、運用の差別化を計る上で重要になってくる。情報戦略やりスク管理が拙劣な機関投資家は淘汰される「選別の時代」に入ることも予想される。
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