金融資産価格変動のクウォンツとMPT ― ゲーム論的不確実性の重要性 ―

1991年10月01日

(刈屋 武昭)

<要旨>

本稿では、金融資産価格変動に対する筆者の見方・考え方を述べ、STATクウォンツ・アプローチの立場を解説する。具体的には

  1. 金融資産価格変動現象は、金融投資・資産運用の意思決定が可逆性をもつため、その基本的特徴としてゲーム論的不確実性を内包すること
  2. そのためMPT(モダン・ポー卜フォリオ・セオリ)を含む通常の経済学的アプローチである原子論的説明(多くの仮定のもとに個人の独立的な最適化行動から積み上げて最終的に需給で価格決定を説明すること)は困難であること
  3. 金融資産価格変動は、情報・分析・予測に基づく投機的思惑・裁定・ヘッジ等多くの意思決定によって集団的に決定されること、またその変動は他の資産価格変動と関係した多元的時系列現象であること
  4. 従って、変動を多次元的時系列確率プロセスとみる統計科学的クウォンツ・アプ口ーチが適切であること

を議論する。議論では、金融的意思決定で重要な情報・分析・予測の役割とゲーム論的不確実性が強調される。実際、投資は将来へのコミットメントであり、必ず予測を必要とするし、金融的投資では信頼性の高い予測式が得られると人々はそれと逆な行動をすることでその予測式は結局成立しなくなる。「クウォンツ」では与えられた情報・データから投資に有用な情報を効率的に抽出し、ポートフォリオ構築・金融商品設計等数量的アセット・アロケーションを狙う。また、MPTを批判的に議論する。

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