経済の動き

1991年03月01日

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<米国経済>

米国経済のリセッション入りがほぼ確実となってきている。'90年10-12月期の実質GNP(速報値)は前期比年率▲2.1%、事前予想の▲3~▲4%よりは小幅なマイナス幅にとどまったものの、その内訳をみると個人消費▲3.1%、設備投資▲4.6%、住宅投資▲15.4%と軒並み減少している。特に在庫投資は前期比▲210億ドル減少し、これだけで全体の成長を▲2.0%押し下げた。

生産関係の指標を見ると、12月の鉱工業生産は前月比▲0.6%と10月から3ヵ月連続して減少となった。生産の減少を受けて、設備稼動率も11月の81.0%ちから12月は80.4%へと低下、8月から5ヵ月連続で低下し、'87年4月以来の水準に落ち込んだ。

雇用については、'91年1月の失業率は6.2%と前月比0.1%悪化した。非農業部門雇用者数は事前の予想(前月比1万人程度)大幅に下回り、前月比▲23.2万人の減少となった。部門別では特に建設業の悪化が目立ち、前月比▲15.5万人減少した。なお、湾岸戦争に伴う予備役招集の影響については、労働省は「予備役招集の雇用に与える影響は分からないが、ほとんどないだろう」と述べている(招集されても勤めている会社を辞めるとは限らないため)。

家計部門をみると12月の小売売上高は▲0.4%となり、2ヵ連続してマイナスの伸びとなった。このうち自動車販売は前月比▲1.4%と引き続き不振であったが、自動車除きの売上高も▲O.1%と11月の0.2%増からマイナスに転じた。また12月の住宅着工件数も前月比▲12.4%と大幅な減少となり、‘ 82年6月以来、8年半振りの低水準と依然として住宅建設の不振が続いている。

物価動向については、12月の生産者物価上昇率は前年同月比5.6%、前月比▲0.6%と前月に比べ上昇率は低下し、原油価格上昇の影響が一巡した感がある。

また、12月のマネー・サプライの伸び率('89年12月比年率)はM2で3.3%、M3で1.5%といずれもFRBのターゲットの下限付近を推移している。

FRBは、こうした景気の悪化、マネー・サプライと銀行貸出の伸びの低迷の持続、商品価格の弱含みを含めたインフレ圧力の減退を受けて、2月1日公定歩合をそれまでの6.5%から0.5%引き下げて6.0%とし、またFFレートの目標水準を0.5%引き下げて6.25%とした。湾岸戦争の米国経済に与える影響が懸念されるが、今後も景気、信用状況をにらみつつ、FRBが引き続き金融緩和のタイミングを採る状況が続くと考えられる。



<日本経済>

○景気は引き続き堅調

日本経済は今のととろ堅調に推移している。ただし景気の先行きに関しては、昨年11月の景気動向指数(先行指数)が40.0で、3ヵ月連続50を下回っており、やや減速感が出ている。なお、12月の生産指数は、前月比では0.5%の下降となっているが、前年比では6.3%の上昇であり、足元の生産は引き続き拡大基調にあるといってよい。

個人消費関連の指標を見ると、昨年12月の大型小売店販売額は前年比6.4%増と比較的堅調さを維持している。ただ、今年1月の新車登録台数・乗用車(軽自動車含む)は前年比0.1%増にとどまり、かなり翳りが見られる。

設備投資関連指標では、先行指標としての機械受注(船舶・電力を除く民需)が昨年10月前月比7.6%減少した後、11月は9.7%増となった。前年比で見ても11月は17.0%の増加であり、ペースダウンはしているものの堅調といえよう。

住宅関連の指標をみると、住宅着工件数は金利上昇などの影響で、前年比の伸び率は低下基調を辿り、12月は2ヵ月連続マイナスで1.4%の減少に。住宅着工件数は今後も減少傾向で推移しよう。

○引き締まった労働需給

労働需給は極めて逼迫している。昨年12月の有効求人倍率(季調済)は1.43倍であり、依然として高倍率のまま推移している。

労働市場のタイト化を映じて、名目賃金指数(全産業、ボーナス等込み)も前年比で11月は4.3%、12月は6.4%とそれぞれ上昇している。消費にとっては好環境である反面、物価面への影響が懸念されるところである。

○消費者物価前年比4%近辺の上昇率

昨年12月の輸入物価は、依然入着原油の高値推移の影響などで、前月比では0.9%の上昇にとどまったものの、前年同月比では、11.5%の上昇となった。国内では化学製品などへの価格転嫁が続いたことが主因で、国内卸売物価は前月比0.1%の上昇(同2.3%上昇)となった。

12月の消費者物価(全国総合指数)は前月比で0.3%下落した。ただし、前年同月比では3.8%上昇した。

○通関出超幅は前年比で増加

昨年12月の通関統計は、出超幅が約54億ドルとなった。季節調整後では26億ドルであり、基調として縮小傾向にある。輸入が原油価格の高騰などで、前年比24.2%の増加となったことの影響が大きい。12月の輸入原油の単価は1バレル32.8ドルで、前月の34.1ドルをピークに下落していくと見込まれる。



<イギリス経済>

イギリス経済は企業部門を中心に景気悪化が続いており、昨年12月に公式にリセッション入りが宣言されている。'90年のGDP成長率は1-3月期の前年同期比1.7%%から、4-6月期には同2.3%とやや回復したが、7-9月期は同0.6%と再び低下しており、'90年の成長率は1%台に止まる見通しである。

個人消費はこれまで景気を下支えしてきたが、小売売上数量は前年同期比で4-6月期1.7%増、7-9月期1.0%増の後、10-12月期は▲O.7%の減少となった。

また、10-12月期の設備稼働率は84.0%と7-9月期の86.2%よりさらに大きく低下した。雇用面では、12月の失業率は6.5%となり、'90年前半の5.7%から悪化している。

小売物価(消費者物価に相当)の前年同月比上昇率でみたインフレ率は、原油価格の上昇ILより10月には10.9%にまで上昇したが、その後は、原油価格の低下、モーゲージ金利の引き下げ(イギリスの小売物価にはモーゲージ金利支払いが構成項目として含まれている)などにより低下し、12月は9.3%となった。

貿易収支は、輸出の増加、輸入の減少から改善傾向にある。11月の貿易赤字は9.7%億ポンドと7-9月期の12.6億ポンドを大幅に下回った。



<ドイツ経済>

旧西独地域(以下、西独)の'90年の実質GNP成長率は4.6%と、'76年(5.6%)以来の高成長となった。乙の内、統一特需などを受け、内需がGNP寄与度で4.7%と好調に推移した一方、外需の寄与度は輸入の増加からマイナスとなった。内需の中で特に好調であったのは、個人消費と設備投資で、GNP寄与度は各々2.4%、1.2%であった。

物価動向についてみると、生計費(消費者物価に相当)の前年同月比上昇率でみたインフレ率は、原油価格の高騰により悪化し10月には3.3%にまで達したが、その後は原油価格の低下に伴い低下し、12月2.7%となった。しかし、景気過熱によるインフレ懸念は依然根強く残っている。ドイツ連銀は2月1日より公定歩合とロンバード・レート(債券担保貸出金利)を0.5%ずつ引き下げ、各々6.5%、9%とした。

貿易面では、(1)旧東独における(西側製品への)需要の拡大、(2)旧西独の貿易相手国における景気の鈍化等―を主因として通関統計ベースでみた貿易黒字は減少傾向にある。

一方、旧東独地域(以下、東独)では経済の悪化が加速している。'90年上半期のGNP成長率は前年同期比▲7.3%であった。また鉱工業生産は前年同期比で4-6月期▲9.5%、7-9月期▲48.1%と大幅に落ち込み、10月は前年同月比▲14.5%となった。これは東独製品に対する需要の低迷、労働者の減少等によるものである。

失業者数は、通貨統合前の6月時点の14万人から急増し1には75万人に達している。これに操短労働者186万人を加えると旧東独労働者の約3分の1が実質的な失業状態にある。



<カナダ経済>

カナダ経済は減速傾向となっている。'90年7-9月期の実質GDPが前期比年率▲1.0%の低下を示し、'90年4-6月期(同▲1.2%低下)に続き2四半期連続のマイナス成長となった。カナダ経済はリセッション入りしていることが確認されたといえよう。

物価動向をみると、消費者物価は11月原油価格上昇の影響により、前月比0.6%の上昇、前年同月比5.0%の上昇となったものの、12月前月比0.1%低下、前年同月比5.0%の上昇となっている。基調としては、やや落ち着いてはいるものの、依然、賃金上昇率は高水準で推移しており、物価上昇圧力は根強い。

貿易収支については、11月12.7億加ドルの黒字と10月の10.2億加ドルから黒字幅は拡大した。11月、輸出の伸びが米国景気の低迷から前月比6.7%減少したものの、輸入の伸びが国内景気の低迷から前月比9.3%減少したことによる。



<オーストラリア経済>

オーストラリア経済は、長期にわたる高金利政策の影響により景気鈍化が続いており、リセッションに入っている。

'90年7-9月期の実質GDP(前期比)は、内需が▲0.1%の減少となる一方、外需の成長寄与度が▲1.5%となった結果、全体では▲1.6%と2四半期連続でマイナス成長となった。内訳としては、個人消費が前期比0.3%伸びと前期の0.6%伸びから弱まり、民間固定資本形成が同0.2%とほぼ横這いに動くとともに、民間非農業部門在庫が同▲0.8%と大幅なマイナス成長寄与度となった。

景気の動向をみると、12月の失業率が前月の8.2%から8.1%へと9ヵ月振りに低下したものの、依然上昇基調にあると判断される。また、小売売上が依然として鈍化しており、12月の住宅着工認可件数も新車登録とともに大幅に低下した。

一方、物価については、7-9月期の消費者物価上昇率が前期比0.7%(4-6月期同1.6%)、前年同期比6.0%(4-6月期同7.7%)の低い伸びとなった。それに伴い、11月に再審議された政府と組合連合(ACTU)の賃金協定で、以前に掲げられた7%(名目)の総合賃上げ目標が6%にまで下方修正され、同時に、'91年1月の所得税減税も決められた。今後のインフレ率は、賃金コストの圧力が鎮まる中、徐々に落ち着きをみせよう。

湾岸戦争開始によるオーストラリア経済への直接の影響は少ないであろうが、原油価格の下落がインフレの改善lとつながると期待できよう。

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