今こそ芸術文化のインフラストラクチャー構築を

1990年04月01日

(吉本 光宏)

■見出し

1.芸術文化の時代に向けて
2.日本における芸術文化の現状:「ハコ型・消費型・兼業型」
3.わが国における文化政策、芸術擁護の現状:「保護型・ハコ型・宣伝型」
4.芸術文化のインフラストラクチャー構築をめざして

■21世紀は芸術復興の時代:人口停滞期と芸術創造

産業や経済の急速な発展を経て、21世紀の日本社会にはどのような時代が訪れるのだろう。

こうしたことを占う指針として、わが国の人口推移をみると、現在は人口の増加期から停滞期に移行する大きな転換点にあることがわかる。厚生省人口問題研究所の予測によれば、1830年以降増加し続けたわが国の人口は、2010年頃に1億3,600万人に達した後、停滞または減少過程に入り、2085年頃には1億2,400万人程度で静止状態になると予測されている。

わが国の人口推移にはこれまで、およそ4つの大きな波があったと推定されている。それぞれの人口増加期には新しい文明が誕生し、日本の人口容量を増加させてきた。そして、それぞれの波が停滞期に差し掛かかる頃、時の権力や経済と結びつきながら、日本を代表する文化や芸術が誕生している。第1波は縄文文化の爛熟期、第2波はかな文学や能・狂言などの平安・室町文化、そして第3波は歌舞伎、浮世絵などに代表される江戸元禄・化政文化などである。

人口の推移と文化の関係をみる限り、第4の人口停滞期にあたる21世紀には、新しい日本文化や芸術が誕生すると考えても不思議ではない。現在の日本経済の繁栄は、平安の貴族社会、鎌倉・室町の武家社会、そして江戸の町人社会と同じように、21世紀の芸術文化を支える基盤として機能するとも考えられる。

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