わが国の年金税制の今後

1989年03月01日

(別宮 真理子)

■見出し

1.年金税制の理論と原則
2.米国の年金税制の現状
3.英国の年金課税の現状
4.日本の年金税制の現状
5.日本の年金制度の問題点と今後

■はじめに

わが国では、21世紀初頭にかけて、他の先進諸国に類例を見ないほど急速に高齢化が進展しようとしている。平均寿命の伸長に伴い、退職時の平均余命が20年前後となり、老後の経済基盤を確保する必要性が一層増してきた。このような状況の下、公的年金制度は21世紀の高齢化社会への長期的展望に基づいて、1986年に抜本的に改正された。一方、自助努力による老後保障の中核となる私的年金についても、その重要性がますます認識されている。また、年金に係る所得税制も、これらの動きに対応して、1987年の所得税法改正の一環として大幅に改正され今日に至っている。

本稿では、わが国の年金制度の健全な発展を期する観点から、年金税制について、租税理論に基づく課税の形態に着目した分析を行い、それをもとに、わが国の年金税制の今後の課題について検討を試みた。なお、この検討を行うに際しては、高齢化および年金制度の成熟化が進み、かつ、最近の税制改正のなかでもより充実した年金税制を模索している米英の状況についても整理した。もとより、国際比較は、その国の社会的背景を総合的にとらえることなくして行うことは不可能であることも事実であり、また両国の年金制度については既に詳しく紹介された文献もあるが、改革を重ね年々変化する米英の年金税制を、ここで課税の原則に立ち返って位置づけてみることも、充分に意義のあることだと考える。

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