2022年11月24日

米中間選挙と今後の経済政策-ねじれ議会から政治機能不全の懸念。高まる連邦債務上限の抵触リスク

経済研究部 主任研究員 窪谷 浩

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■要旨
 
  1. 11月8日に実施された中間選挙では与党民主党が上院で過半数を維持した一方、下院では野党共和党が僅差ながら過半数を奪取した。選挙直前には、バイデン大統領の支持率低迷や民主党のインフレや経済政策に対する有権者の不満から共和党が地滑り的勝利を収めるとの見方が支配的となっていた。しかしながら、共和党は事前予想ほど票が伸びない結果となった。
     
  2. 通常、中間選挙は現職大統領の信任投票と位置づけられるが、今回の中間選挙では24年の大統領選挙出馬を匂わせるトランプ前大統領の信認投票の様相も呈しており、共和党の支持が伸び悩んだ一つの要因と指摘されている。また、「人工中絶」が「経済・職」に次ぐ争点となったことも、民主党の善戦につながったと考えられる。
     
  3. 来年1月からの新議会では上下院で多数政党の異なる「ねじれ議会」となることが決まった。このため、バイデン政権が実現を目指す企業や富裕層に対する課税強化や社会保障の拡充などの歳出拡大策などの実現は野党共和党の反対により実現が困難となった。一方、下院共和党は連邦債務上限の引上げを人質に歳出削減を目指す方針を示している。
     
  4. また、24年の大統領選挙を睨んで与野党対立の激化が予想される中、米国が深刻な景気後退に陥った際の迅速な景気対策の実現が困難とみられるほか、連邦政府閉鎖や債務上限引上げの混乱など政治の機能不全に伴う米国経済への影響が懸念される。

 
(図表1)中間選挙結果
■目次

1.はじめに
2.中間選挙結果とその評価
  (上下院議席獲得状況・投票率)
   :下院は共和党が過半数を奪取、投票率は前回中間選挙から低下
  (民主党が善戦した要因)
   :トランプ氏の影響? 人工中絶問題の争点化
  (出口調査結果)
   :有権者属性毎に支持政党の乖離が大きいものの、前回中間選挙からは縮小
3.経済政策への影響および今後の注目材料
  (ねじれ議会の影響)
   :党派性が強まっている中で議会が機能不全に陥る可能性
  (経済政策への影響)
   :国防予算以外の歳出拡大や企業、富裕層向け増税の実現は困難
  (当面の注目材料(1))
   :政府閉鎖を回避するための12月16日期限の23年度予算審議
  (当面の注目材料(2))
   :23年7-9月期に抵触が見込まれる連邦債務上限の引上げ問題
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経済研究部   主任研究員

窪谷 浩 (くぼたに ひろし)

研究・専門分野
米国経済

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